勝手に応募されたけど、センターは私がもらいます

次々とパフォーマンスが進んでいく。
スタッフが次の名前を読み上げる。

「次の参加者――如月悠真」

客席の端の方から、一人の男子がゆっくり立ち上がった。

黒髪で、少し長めの前髪。
気だるそうな雰囲気で、どこかやる気がなさそうに見える。

陽斗と姫乃が小声で話す。

「なんか…やる気なさそう」
「大丈夫なのかな」

悠真はポケットに手を入れたまま、ゆっくりステージへ歩いていく。

(めんどくさいな…)

そんなことを考えながら、スポットライトの中央に立った。

「始めてください」

音楽が流れ始めた。

最初は静かなギターの伴奏。

悠真はゆっくり顔を上げた。

そして――歌い始める。

その瞬間。

会場の空気が変わった。

低くて落ち着いた声。

力んでいる様子はないのに、声がまっすぐ響く。

客席の参加者たちが思わず顔を上げた。

歌いながら軽く体を動かす。

ダンスも無駄な力がなく、自然にリズムに乗っている。

派手ではない。

でも、なぜか目が離せない。

曲のサビに入ると、声に少し強さが乗る。

会場の視線が完全にステージに集まっていた。

歌い終わる。

静寂。

そして――拍手が起こった。

審査員席でも、空気が変わっていた。

最初にマイクを取ったのは水城奏。

「…驚きました」

正直な声だった。

「声のコントロールが非常に上手い」

「力まずにあの声量を出せるのはすごい」

水城は続ける。

「感情の乗せ方も自然です」

「かなり歌い慣れていますね」

次に真田玲司が口を開いた。

「ダンスもいい」

腕を組みながら言う。

「無駄な動きがない」

「体の使い方がうまい」

少し笑う。

「かなりセンスあるな」

続いて天城蓮。

「ステージの支配力がある」

会場が少しざわつく。

「特別派手なことをしてるわけじゃないのに、目がいく」

天城は悠真を見ながら言った。

「こういうタイプは強い」

次に神崎蒼馬。

「余裕があるな」

短く言う。

「経験あるだろ」

悠真は少しだけ肩をすくめた。

神崎は続ける。

「その実力なら納得だ」

最後に社長の神宮寺龍弥がマイクを取った。

会場は静まり返る。

「如月悠真」

神宮寺はゆっくり言った。

「非常にレベルが高い」

少し間を置く。

「歌唱力、表現力、ダンス」

「どれもトップクラスだ」

審査員席でもうなずく人がいる。

神宮寺は続けた。

「今回のオーディションでも、間違いなく上位候補だろう」

悠真は軽く頭を下げた。

「ありがとうございます」

ステージを降りる。

客席に戻ると、姫乃が小さくつぶやいた。

「…すごい」

陽斗もうなずく。

「うん」

少し驚いた顔をしていた。

「一番余裕あったかも」

悠真は椅子に座りながら、軽くあくびをする。

「はぁ…終わった」

その様子は、まるで本気を出していないようにも見えた。