勝手に応募されたけど、センターは私がもらいます

「姫乃、ちょっとこれ見て」

昼休み、友達の真理が私にスマホを差し出した。

画面には大きくこう書かれていた。

『男女混合アイドルグループ結成オーディション』

「へえ、最近こういうの多いよね」

私は軽く流してお弁当を食べ続ける。

アイドルとか、芸能界とか。
正直、私には関係ない世界だと思っていた。ダンスや歌は小さい頃から親にやってみてほしいと言われ、結構楽しかったから結果長く続いてたけど。

「ちなみにさ」

真理がにやっと笑う。

「姫乃、一次審査通過おめでとう」

「……は?」

私は思わず顔を上げた。

「ちょっと待って。何の話?」

「このオーディション」

「いやいや、応募してないけど」

すると真理は、まるで悪びれもせず言った。

「私が応募した」

「……はあ!?」

思わず教室に響く声を出してしまう。

「だって姫乃かわいいし、絶対受かると思ったんだもん」

「勝手に何してるの!?っていうか私可愛くないし!私が可愛かったら全人類の女子みんな可愛いでしょ!?」
「出たよ無自覚…」

聞けば、真理は私の写真や歌っている動画を勝手に送ったらしい。

しかも一次審査は動画審査だったらしく、それを通過したらしい。

「断ればいいじゃん」

真理はあっさり言う。

確かにそうだ。
別に行かなければいいだけ。

私はその場でメールをもう一度見た。

二次審査:実技審査(歌・ダンス)

「……歌やダンスは好きだけど…絶対私が行っても場違いじゃん」

そう呟きながらスマホを閉じる。

本当は行くつもりなんてなかった。

でも――

数日後。

私はなぜか、オーディション会場の前に立っていた。

「……来ちゃった」

大きなホールの前には、たくさんの参加者が集まっている。

みんなおしゃれで、オーラがあって、いかにも“アイドル志望”って感じだ。私みたいなブスがいてもいい場所じゃない

「帰ろうかな」

そう思いながら中に入る。

そのとき――

ステージの上から歌声が聞こえた。

透き通るような声。
完璧なダンス。

思わず足が止まる。

「……すご」

その瞬間、胸の奥がざわついた。

楽しそうに歌うプロのアイドル。
真剣な表情で踊る人。

みんな、本気だった。

そして気づく。

「……なんか悔しい」

私、まだ何もしてないのに。

「どうせ来たなら」

気づけば、小さく呟いていた。

「負けるのは嫌なんだけど」

その時だった。

「へえ」

後ろから声が聞こえる。

振り向くと、見知らぬ男子が立っていた。

金髪で、どこか軽そうな笑顔。そして、あまりにもビジュアルがいい。

「面白いこと言うじゃん」

「……誰?」

「俺? 同じオーディション受ける人」

彼は笑って言う。

「よろしく、ライバルさん」

この出会いが、後に――

優しすぎる男子。
無気力な天才。
距離が近すぎるチャラ男。
可愛すぎる年下。
そして圧倒的な実力のエース。

そんな個性豊かな男子たちとの物語の始まりになるなんて、

この時の私は、まだ知らなかった。