ある時は下駄箱の中、ある時は校舎裏、ある時は全校生徒の前で告白された。
断る理由もなかったからもちろんOKを出した。
けど何かが違った。
物足りない、あたしを満たしてくれない。
何が足りないのだろう。
彼と出会ったのは美術の授業で互いにデッサンをすることになった時。
隣のクラスの氷紋実鳥と共にすることになった。
第一印象はスポーツやってそうだなと思った。
描き終わった絵を互いに見せ合う。
はっきり言って彼は絵が下手だった。
あたしの魅力を何一つ写し出せてはいない。
けれど今までよりも目を惹かれる、そんな絵だった。
「ごめん、あんまり上手くなくて」
申し訳なさそうに頭を搔く彼は体格と似合わない。
「いいよ〜別に、気にしないで!」
胸の前で手を振ってみせるがあまり効果は感じない。
その後、チャイムが鳴るまで彼はしょぼくれたままだった。
接点は週に2時間だけある芸術の時間だけ。
よく話しかけてくれて、笑顔が素敵だと思った。
多分彼はあたしに気があるんだろうとは直感で分かった。
いわゆる女の勘ってやつだ。
近々告白しに来るだろうと期待していた。
桃色の花は枯れて緑の葉をつけ始める季節。
あたしは告白されては付き合うを繰り返していた。
「蛇目さんってなんか俺の幼馴染に似てるなぁ」
「胡蝶さんのこと?」
あたしと同じで告白されても断らない男。
まさか繋がりがあったとは思わなかったな。
「あっ知ってたんですね。まぁ有名ですからね〜」
ニコッと屈託なく笑う表情に心臓が痛くなった。
どうして?
今までそんなこと無かったのに。
それから緑の葉が茶色くなって、白を被っても氷紋実鳥はなんのアプローチもしてこなかった。
「ねぇ真希、あたしから告白するのってありだと思う?」
「別にいいんじゃないかな。どうしたの急に」
学校とは違い前髪をオールバックにしており、地味な雰囲気とは打って変わってカッコイイ感じだ。
ちなみに真希を振った男にはあたしがこっぴどく振って見せた。
これは完全なる自己満足。
「いやさ、明らかあたしのこと好きなんだけど全然告ってこない子がいてさ」
「勘違いじゃなくて?」
チミっとりんごジュースを飲む。
勘違い……。
「いや、それはないはず。歴代彼氏37が言うんだから間違いない」
「男たらし」
「うっさいわね」
そうは言いつつ頭では違うかもと不安が膨らんだ。
思い違いだったら馬鹿みたいに恥ずかしいな。
「まぁやってみたらいいんじゃないかな」
「他人事だと思って」
「間違ってるとは言いきれないでしょ」
フッと風が吹くように笑うあたしの友達。
誰より優しくて責任を負いやすい子。
まぁいつも受け身だから今回はあたしから動いてもいいのかもしれない。
そうと決まれば行動は早かった。
いつもみたいにメイクをして髪を巻いて、オシャレをして。
堂々と通学路を歩く。
「蛇目さん!」
呼び止められて振り返る。
「これ、落としましたよ」
運はあたしに傾いたみたいだ。
チャンス到来。
「ありがとう、氷紋さん放課後時間空いてる?」
「あーごめん!今日は用があってさ」
申し訳なさそうに手を合わせる。
ここで諦めるもんですか。
「そう……じゃあ教室まで一緒に行きましょ」
有無を言わせず手を握る。
彼はびっくりしたようだけど、無理やり手を抜こうとはしなかった。
他愛もない雑談をするだけで教室についてしまう。
朝早いから人は少ない。
「じゃあまたね」
手を振って去ろうとする背中に向かって口を開けた。
「あたし、あなたのこと好きなの。返事はいつでもいいわ、それじゃ」
髪をなびかせて自分の教室に入る。
もっといつもみたいに甘ったるい声で話すつもりだったのに。
素で告白しちゃったじゃん!!!!!!!
そんな自分に腹が立って床を1度蹴る。
めっちゃ恥ずかしい…………。
この日の授業はずっと上の空だった。
「姫芽、帰るよ」
「えっあっうん」
だから真希があたしに呼びかけるまで全く気づかなかった。
「いい返事だといいね」
あたしより前を歩く真希には何も言ってないのに今日のことを知っているみたいだ。
「姫芽は分かりやすいんだよ。多分氷紋さんも気づいてるんじゃないかな?」
「何によ」
「他の男子とは違うかもなぁ〜みたいな」
眼鏡をグイッと押し上げる。
窓の光に反射してレンズが輝いた。
「ごめん、トイレ行ってくる。何かあったら置いて帰っていいからさ」
「置いて帰るわけないでしょ。早くいっといれ」
手でシッシッと払う。
デコりまくった携帯を取り出してメッセージを返していく。
駅前のケーキ買ってきてって……全く人使いの荒い母だ。
まぁ気になってたからいいけど。
「蛇目さん、今朝の返事……してもいいかな」
まさかこんな場所で会うと思っておらず携帯を落としてしまった。
真っ直ぐ見つめる瞳に体の動きを封じられる。
「あっうん」
心臓が破裂しそうなぐらいバクバクと音を鳴らす。
今まで自分が有利な立場にいたからこんな経験はしたことがなかった。
周囲の音も視界も全部遠くなる。
「これからよろしくお願いしますっ」
花火が打ち上がったように破裂音が体内からした。
目をパチパチさせる。
目の前の恋人は耳まで真っ赤にさせて手を突き出していた。
握るだけじゃもったいない。
あたしはワイシャツの上からでも分かる厚い肉体に飛び込んだ。
「えっあっ、蛇目さん!?」
「姫芽って呼んで!」
ふわりと柔軟剤の香りが鼻をつく。
しばらく抱き合ったあと、実鳥は部活だと言って廊下を走って行った。
タイミングを見計らったように真希が出てくる。
「おめでとう」
「なんかごめん、待たせて」
「いいよ〜一緒に帰らなくてよかったの?」
顔を覗き込む彼女はとても優しかった。
柔らかそうな頬をつつく。
「母さんにおつかい頼まれたから付き合ってよ」
「はーい」
花が咲く前の寒い季節、そこに1つの愛が生まれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「こんな感じ、だから付き合ってる期間はまだ短いんだよね〜」
黙って話を聞いていた蘭は顎を触って噛み砕いている。
「ちなみに実鳥はチキンだから中々踏み切れないぞ」
「それはあたしも知ってるし」
幼馴染と恋人の視線がバチバチと交わる。
「ってか取られないように気をつけろよ。アイツ密かにモテるから」
「当たり前よ、金の力で潰しても構わないわよ」
蘭がぶるっと肩を震わせる。
その時ザバァンと大きい水の音が聞こえてきた。
「帰ってきたみたい」
「行くか」
椅子から腰を上げてあたし達の初めてをくれた人の元へ向かった。
断る理由もなかったからもちろんOKを出した。
けど何かが違った。
物足りない、あたしを満たしてくれない。
何が足りないのだろう。
彼と出会ったのは美術の授業で互いにデッサンをすることになった時。
隣のクラスの氷紋実鳥と共にすることになった。
第一印象はスポーツやってそうだなと思った。
描き終わった絵を互いに見せ合う。
はっきり言って彼は絵が下手だった。
あたしの魅力を何一つ写し出せてはいない。
けれど今までよりも目を惹かれる、そんな絵だった。
「ごめん、あんまり上手くなくて」
申し訳なさそうに頭を搔く彼は体格と似合わない。
「いいよ〜別に、気にしないで!」
胸の前で手を振ってみせるがあまり効果は感じない。
その後、チャイムが鳴るまで彼はしょぼくれたままだった。
接点は週に2時間だけある芸術の時間だけ。
よく話しかけてくれて、笑顔が素敵だと思った。
多分彼はあたしに気があるんだろうとは直感で分かった。
いわゆる女の勘ってやつだ。
近々告白しに来るだろうと期待していた。
桃色の花は枯れて緑の葉をつけ始める季節。
あたしは告白されては付き合うを繰り返していた。
「蛇目さんってなんか俺の幼馴染に似てるなぁ」
「胡蝶さんのこと?」
あたしと同じで告白されても断らない男。
まさか繋がりがあったとは思わなかったな。
「あっ知ってたんですね。まぁ有名ですからね〜」
ニコッと屈託なく笑う表情に心臓が痛くなった。
どうして?
今までそんなこと無かったのに。
それから緑の葉が茶色くなって、白を被っても氷紋実鳥はなんのアプローチもしてこなかった。
「ねぇ真希、あたしから告白するのってありだと思う?」
「別にいいんじゃないかな。どうしたの急に」
学校とは違い前髪をオールバックにしており、地味な雰囲気とは打って変わってカッコイイ感じだ。
ちなみに真希を振った男にはあたしがこっぴどく振って見せた。
これは完全なる自己満足。
「いやさ、明らかあたしのこと好きなんだけど全然告ってこない子がいてさ」
「勘違いじゃなくて?」
チミっとりんごジュースを飲む。
勘違い……。
「いや、それはないはず。歴代彼氏37が言うんだから間違いない」
「男たらし」
「うっさいわね」
そうは言いつつ頭では違うかもと不安が膨らんだ。
思い違いだったら馬鹿みたいに恥ずかしいな。
「まぁやってみたらいいんじゃないかな」
「他人事だと思って」
「間違ってるとは言いきれないでしょ」
フッと風が吹くように笑うあたしの友達。
誰より優しくて責任を負いやすい子。
まぁいつも受け身だから今回はあたしから動いてもいいのかもしれない。
そうと決まれば行動は早かった。
いつもみたいにメイクをして髪を巻いて、オシャレをして。
堂々と通学路を歩く。
「蛇目さん!」
呼び止められて振り返る。
「これ、落としましたよ」
運はあたしに傾いたみたいだ。
チャンス到来。
「ありがとう、氷紋さん放課後時間空いてる?」
「あーごめん!今日は用があってさ」
申し訳なさそうに手を合わせる。
ここで諦めるもんですか。
「そう……じゃあ教室まで一緒に行きましょ」
有無を言わせず手を握る。
彼はびっくりしたようだけど、無理やり手を抜こうとはしなかった。
他愛もない雑談をするだけで教室についてしまう。
朝早いから人は少ない。
「じゃあまたね」
手を振って去ろうとする背中に向かって口を開けた。
「あたし、あなたのこと好きなの。返事はいつでもいいわ、それじゃ」
髪をなびかせて自分の教室に入る。
もっといつもみたいに甘ったるい声で話すつもりだったのに。
素で告白しちゃったじゃん!!!!!!!
そんな自分に腹が立って床を1度蹴る。
めっちゃ恥ずかしい…………。
この日の授業はずっと上の空だった。
「姫芽、帰るよ」
「えっあっうん」
だから真希があたしに呼びかけるまで全く気づかなかった。
「いい返事だといいね」
あたしより前を歩く真希には何も言ってないのに今日のことを知っているみたいだ。
「姫芽は分かりやすいんだよ。多分氷紋さんも気づいてるんじゃないかな?」
「何によ」
「他の男子とは違うかもなぁ〜みたいな」
眼鏡をグイッと押し上げる。
窓の光に反射してレンズが輝いた。
「ごめん、トイレ行ってくる。何かあったら置いて帰っていいからさ」
「置いて帰るわけないでしょ。早くいっといれ」
手でシッシッと払う。
デコりまくった携帯を取り出してメッセージを返していく。
駅前のケーキ買ってきてって……全く人使いの荒い母だ。
まぁ気になってたからいいけど。
「蛇目さん、今朝の返事……してもいいかな」
まさかこんな場所で会うと思っておらず携帯を落としてしまった。
真っ直ぐ見つめる瞳に体の動きを封じられる。
「あっうん」
心臓が破裂しそうなぐらいバクバクと音を鳴らす。
今まで自分が有利な立場にいたからこんな経験はしたことがなかった。
周囲の音も視界も全部遠くなる。
「これからよろしくお願いしますっ」
花火が打ち上がったように破裂音が体内からした。
目をパチパチさせる。
目の前の恋人は耳まで真っ赤にさせて手を突き出していた。
握るだけじゃもったいない。
あたしはワイシャツの上からでも分かる厚い肉体に飛び込んだ。
「えっあっ、蛇目さん!?」
「姫芽って呼んで!」
ふわりと柔軟剤の香りが鼻をつく。
しばらく抱き合ったあと、実鳥は部活だと言って廊下を走って行った。
タイミングを見計らったように真希が出てくる。
「おめでとう」
「なんかごめん、待たせて」
「いいよ〜一緒に帰らなくてよかったの?」
顔を覗き込む彼女はとても優しかった。
柔らかそうな頬をつつく。
「母さんにおつかい頼まれたから付き合ってよ」
「はーい」
花が咲く前の寒い季節、そこに1つの愛が生まれた。
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「こんな感じ、だから付き合ってる期間はまだ短いんだよね〜」
黙って話を聞いていた蘭は顎を触って噛み砕いている。
「ちなみに実鳥はチキンだから中々踏み切れないぞ」
「それはあたしも知ってるし」
幼馴染と恋人の視線がバチバチと交わる。
「ってか取られないように気をつけろよ。アイツ密かにモテるから」
「当たり前よ、金の力で潰しても構わないわよ」
蘭がぶるっと肩を震わせる。
その時ザバァンと大きい水の音が聞こえてきた。
「帰ってきたみたい」
「行くか」
椅子から腰を上げてあたし達の初めてをくれた人の元へ向かった。
