僕から重たい告白をしてから1週間後。
実鳥と真希ちゃんと僕で姫芽の部屋でオレンジジュースで乾杯していた。
付き合った翌日に幼馴染に報告したらその彼女まで伝わってしまい、こうしてささやかなパーティーが開かれることになったのだ。
ちなみに姫芽の家はマンションの最上階である。
正直めっちゃ怖い、やらかしたら命が無さそうで凄く怖い。
実鳥と真希ちゃんは普通の家のようにゆったり過ごしている。
慣れって凄いな……。
ちびちびとオレンジジュースを飲みながら金髪の彼が口を開いた。
「いやぁ〜まさか2人が付き合うとは……津調さん。コイツは基本誰にでも優しいからすぐに虫がよってくる、気をつけろよ」
「お前は何言ってんだ」
軽口を叩く実鳥の背中をバシッと押す。
だが、僕よりガタイいいからビクとも動かない。
羨ましさと腹立たしさでムスッとする。
「そういえば、まっきーってらんっちのどこ好きなの?」
「えっ!?」
急に話を振られると真希ちゃんはビクッと肩を震わせた。
「僕も知りたい」
真っ直ぐ見つめると頬を朱に染めて、モジモジしながら小さな口を開いた。
「うーん……なんて言えば……そうだなぁおばあちゃんみたいというか」
「おばあちゃん!?」
実鳥が開いた口が塞がらないようだ。
多分優しいとか安心するとかだろうか。
パッと思いついた救うという言葉は重いような気もした。
木皿に入った高級そうなクッキーを手に取る。
しっとりしていてバターの風味が口に広がった。
バター系のお菓子はあんまり好きじゃなかったけど、これは例外。
「このクッキー、確かまっきー好きだよね」
「うん。チョコ味も好きだよ」
にへっと笑う真希ちゃんの目に黒いベールはない。
出会ってから初めて見る姿に僕の頬も緩む。
このクッキーいくらするんだろ……。
帰ったら調べてみるかぁ。
異国の人形みたいな姿をした同級生を見る。
「姫芽は?なんで実鳥を好きになったの?」
机に肘を着いて頬を支える。
顔が歪むと聞いてからはやらないよう気をつけていたが、今日ぐらいいいだろう。
この場に不釣り合いなスナック菓子を口に運びながら彼女はケロッと言った。
「まぁ顔が良かったのが1番だったけど、しだいに一緒にいて楽だなぁと思って現在……って感じかな」
「へぇ〜」
どうでも良さそうな相槌になってしまった。
奥歯でコンソメ味のスナック菓子を砕く。
心の奥で渦巻く何かを感じながら目を瞑る。
「津調さん、お互い変な虫が寄らないよう気をつけような」
「はいっ」
2人の硬い決意を聞いて「そんなことさせるわけない」と姫芽も思っただろう。
金色の髪がまだ明るい光に照らされて輝く。
今まで付き合った子の中にもこんな子はいなかったかも。
ぼんやりと菓子に手を伸ばし続ける。
「ところで3人とも!夏休みはまだまだこれからだよ!遊びに行かなきゃだよ!!」
「その前に宿題終わらせろよ〜」
「もう!今それは置いとく!」
僕の余計な一言に姫芽が頬をぷくーっと膨らませた。
勉強会とか、この人数でやったら楽しそうだなぁと思ったけど多分遊んじゃうんだろうなぁと想像する。
真希ちゃんはクスクス笑いながらこちらを見る。
そっと耳元まで近づかれ、「また2人での思い出も作ろうね」と囁かれた。
一体どこでそんな必殺技を覚えてくるのか。
ビックリするぐらい可愛くてそのまま抱きしめたくなる。
いや……うーん……。
ガバッと抱きしめてもよかったけど、ワイワイ騒いでる彼らに説明するのも面倒だ。
ここは大人しくしておこう。
そこからは盛り上がるギャルカップルに時々相槌を打ったり、欠伸をして怒られたり日が橙色になるまで続いた。
「じゃあまたね〜約束忘れないでよー!」
「忘れたら家まで行くからな〜」
姫芽と実鳥に手を振られる。
後者に関しては冗談の枠に収まらないだろう。
実際遊ぶ約束をしてた日の前日に夜更かしをしていて朝起きられないことがあった。
その時は無理やり公園に引っ張られていった気がする。
皆がサッカーをしてる中、僕は1人木陰で涼んでいた気がするようなしないような。
「はいはい、じゃあまた」
「またね」
2人が見えなくなるまで手を振る。
正面を向くと優しい色が僕らを照らしていた。
「ねぇ真希ちゃん、手、繋いでいい?」
「……いいよ」
恥ずかしそうに小さな掌を差し出してくる。
それをぎゅっと握った。
「両親は大丈夫?」
「うん、今までが嘘みたいに干渉してこないんだよね。お陰でって言ったらあれだけど……最近はぐっすり眠れるんだ」
あの日以来、笑顔になる回数が増えた。
どうやら真希ちゃんの両親は祖父母にこっぴどく叱られたらしい。
だが反省している様子はなかったらしく住む場所を変えたということは聞いていた。
近かった距離が更に近くなる。
空いている手で眼鏡を取り、唇に柔らかい感触が加わった。
それはほんの短い時間だったけど体温を上昇させるにはとても長い。
「ありがとう」
「えっ、あっ、えと」
本当にどこで覚えてくるんだ!!!
僕を見つめる真希ちゃんの雰囲気はちょっと色っぽく見えた。
だがすぐに無邪気さを取り戻し、僕より顔を真っ赤にさせる。
「急に大胆すぎでは」
「キスは私からしようって決めてて……もう恥ずかしいからやらない」
「えー!やってよ!」
「やーらーなーい!」
意味の無い押し問答。
それすらも愛おしく感じる。
風邪がふわりと緑に染まった葉を舞いあげた。
その葉に付いていた花びらが真希ちゃんの頭上へと着地する。
虫食いの後がハートに見えた。
「可愛いイタズラだね」
「?なにが?」
そっと手に取って息を吹く。
花びらは風と共にどこかへ行ってしまう。
「真希ちゃん」
「なに?」
ぎゅっと抱きしめる。
柔軟剤の香りが辺りを包み、幸せな気分になった。
きゃっと短い声を聞こえる。
「これからいっぱい笑顔にさせるから覚悟しろよー!!」
そう言って更に力を込めた。
初恋の人も僕の背中に手を回しぎゅっと抱きしめる。
今までで一番の笑顔で、
「ふふっ、期待してる!」
と言われて心臓を射抜かれた。
僕はこれから何回射抜かれてしまうんだろう。
このままじゃ残機がいくらあっても足りないじゃないか。
本当に……。
心が幸せという不確定な形に染められていく。
淡いピンク色の夕焼けが2人を包み込んだ。
楽しそうに笑い合う恋人を邪魔するものは誰もいない。
実鳥と真希ちゃんと僕で姫芽の部屋でオレンジジュースで乾杯していた。
付き合った翌日に幼馴染に報告したらその彼女まで伝わってしまい、こうしてささやかなパーティーが開かれることになったのだ。
ちなみに姫芽の家はマンションの最上階である。
正直めっちゃ怖い、やらかしたら命が無さそうで凄く怖い。
実鳥と真希ちゃんは普通の家のようにゆったり過ごしている。
慣れって凄いな……。
ちびちびとオレンジジュースを飲みながら金髪の彼が口を開いた。
「いやぁ〜まさか2人が付き合うとは……津調さん。コイツは基本誰にでも優しいからすぐに虫がよってくる、気をつけろよ」
「お前は何言ってんだ」
軽口を叩く実鳥の背中をバシッと押す。
だが、僕よりガタイいいからビクとも動かない。
羨ましさと腹立たしさでムスッとする。
「そういえば、まっきーってらんっちのどこ好きなの?」
「えっ!?」
急に話を振られると真希ちゃんはビクッと肩を震わせた。
「僕も知りたい」
真っ直ぐ見つめると頬を朱に染めて、モジモジしながら小さな口を開いた。
「うーん……なんて言えば……そうだなぁおばあちゃんみたいというか」
「おばあちゃん!?」
実鳥が開いた口が塞がらないようだ。
多分優しいとか安心するとかだろうか。
パッと思いついた救うという言葉は重いような気もした。
木皿に入った高級そうなクッキーを手に取る。
しっとりしていてバターの風味が口に広がった。
バター系のお菓子はあんまり好きじゃなかったけど、これは例外。
「このクッキー、確かまっきー好きだよね」
「うん。チョコ味も好きだよ」
にへっと笑う真希ちゃんの目に黒いベールはない。
出会ってから初めて見る姿に僕の頬も緩む。
このクッキーいくらするんだろ……。
帰ったら調べてみるかぁ。
異国の人形みたいな姿をした同級生を見る。
「姫芽は?なんで実鳥を好きになったの?」
机に肘を着いて頬を支える。
顔が歪むと聞いてからはやらないよう気をつけていたが、今日ぐらいいいだろう。
この場に不釣り合いなスナック菓子を口に運びながら彼女はケロッと言った。
「まぁ顔が良かったのが1番だったけど、しだいに一緒にいて楽だなぁと思って現在……って感じかな」
「へぇ〜」
どうでも良さそうな相槌になってしまった。
奥歯でコンソメ味のスナック菓子を砕く。
心の奥で渦巻く何かを感じながら目を瞑る。
「津調さん、お互い変な虫が寄らないよう気をつけような」
「はいっ」
2人の硬い決意を聞いて「そんなことさせるわけない」と姫芽も思っただろう。
金色の髪がまだ明るい光に照らされて輝く。
今まで付き合った子の中にもこんな子はいなかったかも。
ぼんやりと菓子に手を伸ばし続ける。
「ところで3人とも!夏休みはまだまだこれからだよ!遊びに行かなきゃだよ!!」
「その前に宿題終わらせろよ〜」
「もう!今それは置いとく!」
僕の余計な一言に姫芽が頬をぷくーっと膨らませた。
勉強会とか、この人数でやったら楽しそうだなぁと思ったけど多分遊んじゃうんだろうなぁと想像する。
真希ちゃんはクスクス笑いながらこちらを見る。
そっと耳元まで近づかれ、「また2人での思い出も作ろうね」と囁かれた。
一体どこでそんな必殺技を覚えてくるのか。
ビックリするぐらい可愛くてそのまま抱きしめたくなる。
いや……うーん……。
ガバッと抱きしめてもよかったけど、ワイワイ騒いでる彼らに説明するのも面倒だ。
ここは大人しくしておこう。
そこからは盛り上がるギャルカップルに時々相槌を打ったり、欠伸をして怒られたり日が橙色になるまで続いた。
「じゃあまたね〜約束忘れないでよー!」
「忘れたら家まで行くからな〜」
姫芽と実鳥に手を振られる。
後者に関しては冗談の枠に収まらないだろう。
実際遊ぶ約束をしてた日の前日に夜更かしをしていて朝起きられないことがあった。
その時は無理やり公園に引っ張られていった気がする。
皆がサッカーをしてる中、僕は1人木陰で涼んでいた気がするようなしないような。
「はいはい、じゃあまた」
「またね」
2人が見えなくなるまで手を振る。
正面を向くと優しい色が僕らを照らしていた。
「ねぇ真希ちゃん、手、繋いでいい?」
「……いいよ」
恥ずかしそうに小さな掌を差し出してくる。
それをぎゅっと握った。
「両親は大丈夫?」
「うん、今までが嘘みたいに干渉してこないんだよね。お陰でって言ったらあれだけど……最近はぐっすり眠れるんだ」
あの日以来、笑顔になる回数が増えた。
どうやら真希ちゃんの両親は祖父母にこっぴどく叱られたらしい。
だが反省している様子はなかったらしく住む場所を変えたということは聞いていた。
近かった距離が更に近くなる。
空いている手で眼鏡を取り、唇に柔らかい感触が加わった。
それはほんの短い時間だったけど体温を上昇させるにはとても長い。
「ありがとう」
「えっ、あっ、えと」
本当にどこで覚えてくるんだ!!!
僕を見つめる真希ちゃんの雰囲気はちょっと色っぽく見えた。
だがすぐに無邪気さを取り戻し、僕より顔を真っ赤にさせる。
「急に大胆すぎでは」
「キスは私からしようって決めてて……もう恥ずかしいからやらない」
「えー!やってよ!」
「やーらーなーい!」
意味の無い押し問答。
それすらも愛おしく感じる。
風邪がふわりと緑に染まった葉を舞いあげた。
その葉に付いていた花びらが真希ちゃんの頭上へと着地する。
虫食いの後がハートに見えた。
「可愛いイタズラだね」
「?なにが?」
そっと手に取って息を吹く。
花びらは風と共にどこかへ行ってしまう。
「真希ちゃん」
「なに?」
ぎゅっと抱きしめる。
柔軟剤の香りが辺りを包み、幸せな気分になった。
きゃっと短い声を聞こえる。
「これからいっぱい笑顔にさせるから覚悟しろよー!!」
そう言って更に力を込めた。
初恋の人も僕の背中に手を回しぎゅっと抱きしめる。
今までで一番の笑顔で、
「ふふっ、期待してる!」
と言われて心臓を射抜かれた。
僕はこれから何回射抜かれてしまうんだろう。
このままじゃ残機がいくらあっても足りないじゃないか。
本当に……。
心が幸せという不確定な形に染められていく。
淡いピンク色の夕焼けが2人を包み込んだ。
楽しそうに笑い合う恋人を邪魔するものは誰もいない。
