ノイズの向こうできみは歌う

そう言われて簡単に諦める山都由真ではない。

入学式の時点で気づくべきだった。
いや、気づいてはいたけど、見ないふりをしたかったのだ。
だってめんどうだ。

「ジョージやっほー! ねぇseasonsって好き? あたしCD全部持ってるんだけど、これオススメー!」
「明日当たるんだよー。ジョージ英語得意? 教えてー!」
「LODのチケット取れたの! 一緒に行かない?」

だぁぁうるせぇ!!
ちょっとは黙れ!!

静かに過ごすはずだった中学生活が、気がつけば目立ちまくっている。

うちのクラスには山都由真と同じ小学校だったやつが多いらしく、これだけ騒いでも「またか」みたいな目で見られている。
生暖かい目で見られて、人と関わる気のなかった俺はたまったもんじゃない。

「おまえ、いつになったら諦めるんだよ」

昼休み、中庭の片隅で俺は隣に座る山都由真にそう言った。

日射しが気持ちいいが、少し風があるせいで人が少ない。その隅っこのベンチに俺たちは座っていた。

つーかなんで一緒に弁当食うことになってんだよ。

「諦めるってなにが?」
「……バンドのことだよ。俺、断っただろ」

山都由真は玉子焼きを頬張った。
相変わらず、それで足りるのかと疑問に思うほどの弁当箱である。
でも中身は色とりどりで可愛らしく、これをあのリュー先輩が作っているというのだから驚きだ。
あの先輩、料理が得意らしい。

「あたし、あれからジョージをバンドに誘ったっけ?」
「いやそれ目的で近づいてきたんじゃねぇのかよ!」

玉子焼きを飲み込んでから言い放った山都由真に、俺は思わず突っ込んだ。

じっと俺を見つめていた山都由真だったが、やがて目を伏せて言った。

「ジョージと仲良くなりたいだけだよー」

なおも山都由真は箸を進める。

俺はこいつが分からない。
入学式の日の一件から、どうしてもバンドがやりたいのかと思った。
だけどこんなことを言い放つ。

仲良くなりたい? なんのために?

「……バンドはやらないのか?」
「えっ、なになに!? ついにやる気になった!?」
「ちげぇ!」

 まったく、油断も隙もない。山都由真はちぇーっと口を尖らせた。

「おまえ、なんでバンドやりたいの?」

決して絆されたわけじゃない。
ただ、気まぐれに聞いてみただけだ。
横顔に山都由真の視線を感じるが、俺は気づかないふりをして箸を進めた。

「あたしね、小学生のときからリューとバンドやってるの。すっごく悲しいことがあって、落ち込んでたときに、リューはあたしにギターをくれた。歌とギターは、あたしの魔法のアイテムなの。ステージに立つのがほんとに楽しかった。……ただ、ベースの人はなかなか相性が合う人がいなくて、ずっと入れ替わりだったんだけど……」
「え、おまえライブとかやってたの?」
「そう、ムジカ! あそこでよくライブしてたんだよー」