ノイズの向こうできみは歌う

「あ、でも無理はすんなよ?」

「うん、それは大丈夫。あのね、いま、毎日が楽しいの。そりゃあ聞こえの度合いの違いでぶつかることもあるけど、やっぱりあたし、人と話すことが好きみたい。聾者に比べたら手話もまだまだだし、伝わらないこともあるけど、次はなにができるだろうって考えると楽しいの。音楽だって諦めてないよ。聞こえなくても有名になった音楽家とかもいるし」

こいつのこの強さはどこから来るんだろう。
俺からしたら、落ち込むようなことがいっぱいあったはずだ。
俺の些細なトラウマからも、引っ張り上げてくれた。

「いつかポキリと折れてしまわないか、俺は心配だよー」

頭を撫でながら言う俺に、山都はまたくすりと笑った。

「そのときは、ジョージがいなくなったときだよ」
「は?」
「ジョージがいるから強くなれるの」

どういう意味だ?

首を傾げる俺に、山都は続けた。

「『耳を塞ぎ込んでうずくまる僕を 強い音で引き戻す君よ』」

それはLIVE on LIVEの歌詞だった。

ライブのことを歌った曲だと思った。
それが、俺のことを言っている……?

「ジョージとまた、ステージに立てたらって思うよ」

それは『好き』と同じくらい嬉しい言葉だ。

俺たちを繋いでいたのはライブだった。

最初は知らない人。
自分だけが知ってると思ってる人から、お互いに知ってる人へ。
そしていまは特別な人。

ライブが俺たちの関係を変えていった。

頭で考えてるだけじゃなくて、口に出して、行動して、そしたらきっと、少しずつでも前に進んでいける。

山都とまた、一緒にステージに立つ日を待っている。


『LIVE』
ライブ、生きる、楽しむ、主食にする。

彼女はLIVEを主食にしている。


〈Fin〉