ノイズの向こうできみは歌う

山都は、空気が抜けたように俯いてしまった。

なんだこれ。
なんでこいつこんなに可愛いんだ。

「あっはははは!」

つい笑い声も上げちゃうってもんだ。

でも山都はそれがお気に召さなかったらしい。
恨みがましげに俺を睨みつけてきた。

「あたしが言ったんだからジョージも言ってよ……!」
「言ったじゃん、文化祭の前に」
「でもあたしが聞こえてないと思って言ったんでしょ!?」

それもそうか。
俺は少し考え込んだ。

掴んだままだった山都の腕を離す。

俺は左手をグーにして、右手で左手の甲を撫でるように二回まわした。

その瞬間、赤かった山都の顔がさらに赤くなった。

「ずるい……! 口で言ってって言ってんじゃん!」
「なに? お前、これを言ってほしいの?」

山都はぐうっと押し黙る。

まぁ俺も、これを口に出すのは勇気が要る。
勇気が出るまでもう少し待ってくれ。

俺は山都とずっと話していきたいんだ。
手話をもっと覚えなくちゃいけない。

その代わりといってはなんだけど、俺は山都を抱き締めた。
腕の中で山都が緊張したのがわかった。

「そういや俺に似てる子って男?」

まだ聞いてなかった。
そこは重要だ。

山都はくすりと笑う。

「女の子だよ。意地っ張りで、音楽嫌いなの」
「俺と全然違うじゃん」
「似てるよー。ツンツンしてるとことか」

ちょっと納得いかない。
俺、そこまで山都に冷たいか?

「それじゃ、山都の歌聞かせてやんないとな」
「あーどうかな……。あの子、ろう者だからなぁ」

ろう者……。
小さいときから聞こえないってことか。

「大丈夫だろ。俺をこんなにしたんだから」

しつこさにかけては山都はピカイチだ。
その持ち前の明るさで、きっとどうにかできるだろう。