ノイズの向こうできみは歌う

「あたしのこと好きって言ったくせにー」

……いまなんつった?
それは一度しか言ってないぞ?

「お前……! あのとき聞こえてたのかよ!」
「あ、やば。聞こえないふりしたんだった」

山都は口を押さえるけど、もう遅い。
ばっちり聞こえたからな!

俺は勢いよく立ち上がった。
が、どうすることもできず、その場にしゃがみ込んだ。
頭を抱え込む。

「最悪だ……。なかったことにしたいのに……」

もっとちゃんとドラマチックに告白したかった。
それこそ、告白だけで、山都が落ちてしまうような。

「ちぇっ。嬉しかったのになー」

屋上に沈黙が落ちる。
俺はちらりと山都を見上げた。
自分が言ったことの意味に、気づいてないらしい。

「なんで嬉しかったんだ?」

問い掛けてようやく気づいたようだ。
山都は、はっとして慌てだす。

「あ、いや、いまのは……」

顔がだんだん赤くなっていく。
山都はギターを置いて立ち上がった。

逃がすかよ!

よほどテンパってたのか、山都はドアとは反対方向に逃げていく。
馬鹿め、そっちは逃げ場がないぞ?

ぱしっと腕を取った俺は、屋上の柵に山都を押しつけるかたちになってしまった。

「なぁ、あの言葉聞いてどう思ったんだ?」

山都は目を合わせようとしない。
真っ赤になってあわあわと目を泳がせている。

「う、嬉しかった……」
「なんで?」

今度はごまかさせない。
いじわるかもしれないけど、聞こえなかったふりをされたんだ。
これくらい許してくれ。

瞳を潤ませた山都は、きっと俺を見上げて言った。

「もう! 好きだからだよ! それくらい分かってよバカ!」