ノイズの向こうできみは歌う

バンド名を変えたくらいで、大きく変わることじゃないのかもしれない。

でも、お前の歌は、雑音なんかじゃない。
ここにいる人たちがそう言ってるのが、聞こえているか?

エシオンがいいと言ったのは俺の身勝手だったかもしれないけど、いまではそれが良かったと思っている。
雑音じゃないの、わかってくれよ?

最後の音を三人でジャカジャカ鳴らす。
この曲を締めてしまったら、ライブが終わってしまう。

あぁ、終わりたくないな。
ずっとこの時間が続けばいいのに。
楽しい時間はいつか終わりが来てしまうんだな。

でも。

顔を上げる。
ギターをかき鳴らす山都と目が合う。
ドラムを叩くリュー先輩と目が合う。

そこには俺と同じ感情が浮かんでいた。
みんな同じ気持ちなんだな。

山都がギターのネックを振り上げた。
始めたのなら終わらせなければ。
そこからまた、新しいものが始まる。

さあ、ラストだ!

山都が降り下ろすと当時に、ギターとベースとドラムの最後の一音が重なった。
終わった……。
終わってしまった……。

歓声が上がる。
拍手が鳴り響く。

二年の先輩たちが楽器を預かってくれた。

三人でステージの前の方に歩み出る。
観客席は笑顔で溢れていた。

あぁ、やりきった。
やりきったんだな。

「今日は最後までありがとうございました! このあとも文化祭楽しんでください! ほんとにほんとにありがとうございました!」

山都がおじぎをするのに続いて、俺たちも頭を下げた。
俺が顔を上げても、山都はまだおじぎをしていた。
そのまま両手で顔を押さえる。
震える肩に、泣いてることに気づいた。

山都、やっと泣けたんだな。

俺は左手を伸ばす。
山都はすぐそれに気づいて、右手をおずおずと差し出した。

それに対抗してリュー先輩も山都の左手を握る。
山都は驚いて左手を見やる。
じっと見ていたが、やがて吹き出した。

顔を上げた山都は、晴れやかな笑顔を浮かべていた。
目にはまだ少し涙が浮かんでいる。

そのまま両手を挙げた。
俺と山都とリュー先輩。
三人で万歳するかたちになる。

歓声が一段と大きくなった。

なぁ山都。
これが俺の人生の中で、一番最高のライブだったって胸を張って言えるよ。


そうしてエシオンの最初で最後のライブが終わった。