ノイズの向こうできみは歌う

えー!? と客席からブーイングが起きた。

なんだこれ。
みんな最高かよ……。
ここにいるみんなが山都の歌をもっと聞きたいと思ってくれている。

山都、聞こえてるか?
お前の歌は最高なんだぞ。

「そんなこと言わないでよー。あたしももっと歌ってたいよー。……えっと、これまでカバー曲をやってきたんですが、最後だけオリジナル曲をやらせてもらってもいいですか?」

わーっ! と歓声が上がった。
この学校には山都と同じ小学校だったやつが多い。
ノイズを知ってる人もそこそこいるのかもしれない。

山都は観客席を見渡して、嬉しそうに顔を歪めた。
その気持ちはわかるぞ。

「昔からやってた曲なんですけど、今回、歌詞を新しくしてきました。……聞いてください。『LIVE on LIVE』」

このタイトルを聞いたとき、山都の言葉を借りるなら『運命』だと思った。
山都を表す言葉だと思ったものを、山都はエシオンの曲だと言ってくれる。
こんな幸せなことがあるか。

照明が落ちる。
俺たち三人だけにスポットライトが当てられた。

リュー先輩のスティック音が鳴り響く。

繰り返しのイントロのフレーズに続いて、山都の歌声が乗った。

   暗がりのこの舞台は一人きりのようで
   強がりを示すように 笑っていた

山都は目を閉じて、ギターをかき鳴らしながら歌う。

初めて聞く観客も多いだろう。
でも誰もがその歌声に聞き入っている。

切なく響く歌声は、胸を打つ。
歌詞もメロディも、初めて聞いたときから俺の心を捉えて離さなかった。

ここにいる人たちにも同じように届けばいい。

   隣に立つ存在に気づいたのはそんな時
   零れた落ちたこの涙が僅かに灯した

山都と出会ってからのことを思い出していた。

最初は変なやつだと思った。
自己紹介は妨害するし、家までついてくるし、挙げ句の果てには「バンドやろう!」だ。
こちとらトラウマだっつーの。

でも、山都がそうやって誘ってくれなかったら、俺は今でも一人だったのだろう。
ベースを弾くこともできず、心許せる相手もなく、灰色な中学生活を送ってたはずだ。

   心から射す光が見えてるかい?
   伝えたい想いはひとつだけ
   もう独りじゃない 分かったから
   歌うよ 君に

彼女の歌が、こんなにも愛おしい。
この歌声をずっと守っていけたらと思った。

でも、それは後悔じゃなくて。

   届いてほしくて
   叫ぶよ 最後まで

山都は歌う。
今を、未来を。

後悔がないように、いま出せる力の全てを振り絞って歌う。
だからこんなに胸を打つんだろうか。

山都はエシオンが好きだと言った。
雑音(ノイズ)じゃなくて、エシオンが好きだと。

ノイズのままだったら、どうなってたんだろうか。