ノイズの向こうできみは歌う

「エシオンの記念すべき初ライブだよ」

にっと笑って山都は言う。

そして最後のライブだ。

口にはしなくても、三人とも分かっている。

それでも、今日はエシオン初めてのライブでしかない。

歓声が一段と大きくなった。
先輩たちのライブが終わったのだろう。

俺たちは誰からともなく右手を上げた。
そして拳を合わせる。

さぁ、楽しい時間の始まりだ。


一曲目、seasonsの代表曲。
知ってる人も多いだろう。

掴みは上々。
手拍子も揃っていて、seasonsの人気の高さを窺わせられる。
でも山都の歌唱力の効果も大きいだろう。

「こんにちはー! 初めまして、エシオンです!」

でなければ、このMCだけでこんなに歓声は上がらないだろう。

「今日は最後まで楽しんでいってくださいよろしく!」

あーこの感じだ、この感じ。
ノイズはこうだった。
……いや、今はエシオンのヤマトだ。

山都はイントロのギターをかき鳴らす。

二曲目はLODの最新曲。
軽快なダンスナンバーだ。
やっぱりうちの学校でもファンはいるらしく、それだけでわぁっと声が上がった。

つーか山都。
ギター走ってる。
大丈夫か?

ちらっと見ると、目が合った。
にしゃっと笑った顔で、確信した。
こいつ、わざとやってるな……?

ぴょんぴょん飛び跳ねて、まるで「ついてこれるかな?」とでも煽ってるかのようだ。
いいだろう、そっちがその気なら合わせてやるよ。

イントロであんだけ飛び跳ねてたのに、歌声はぶれることがない。
つくづく天才なヤツだ。
いや、本人の努力も大きいだろう。

山都をまねてか、サビで飛び跳ねてる観客も多い。
これ、体育館の床大丈夫か?
一抹の不安がよぎる。
あとで生徒会に怒られても知らないからな?

ダカダン! とドラムの音で締めて、はっとした。
これはテンポ上げたこと怒ってマスネ……?

ライブが終わってから、どやされるかもしれない。
そんときは妹を盾にしよう。

続けざまに三曲目。
これもseasonsのラブソング。
ボーカルじゃなくてギターが歌詞を書いた曲で、ラブソングの隠れた名曲と名高い。

山都は高音も難なく歌い上げた。
今日の山都は神がかってるな。

拍手と歓声が最高潮に鳴り響く。

山都の両親は来てるだろうか。
兄貴は、うちの親は。
オーナーは。
真吾さんは。

できることならみんなに聞かせたい。
知ってる人、知らない人、世界中の人に。

これが最後の曲だ。
泣いても笑っても最後。

「次が、最後の曲になります」