ノイズの向こうできみは歌う

夕方、一日目終了のアナウンスが入る。

俺たちはやっぱり屋上に来ていた。
もうここが俺たちの居場所みたいになってしまっている。

夕日の差す屋上で、俺たちは帰っていく人たちを見下ろしていた。

階下のざわめきと、風の音だけしか聞こえない。
俺たちの間には言葉はなかった。

でもそれが気まずくない。
なんとなく、同じことを考えてる気がした。

「……いよいよ明日だね」
「おう」

明日で全てが終わってしまう。
夏の間、頑張ってきたことが。

音楽と出会って、ずっとやってきたことが。

でもそれは口には出さない。
俺も山都もわかっている。
どんなに楽しい時間も、いつかは終わりが来てしまうことを。

「ライブ、絶対成功させようね」
「もちろんだ」

俺たちは拳を合わせた。

     *

英語の授業中、辞書を引いてて一つの単語が目に入った。

『live on』

〝リブオン××〟で〝××を主食にしている〟という意味になるらしい。

LIVE on LIVE

ライブを主食にしているあいつにぴったりの言葉だと思った。


歓声が聞こえる。

リュー先輩信者スリーピースバンドによる、ラストの曲だ。

つーかあの人たち楽器やってたのかよ。
知らなかった。
リュー先輩仕込みなのか、なかなかうまい。

『大』の先輩がベースなのは意外だった。
すっげーテク。
『大』とか言ってすみませんでした。
今度ベース教えてもらおう……。

俺は肩からかけたベースを見下ろす。

久々のステージだ。
一年振り?
あのときの俺は、中学のステージに立つなんて思いもしなかった。

俺は右手に視線を落として、ぎゅっと握る。
冷たい。
緊張してるのか?

「ほらジョージ」

背中を軽く叩かれる。
髪をポニーテールにした山都が隣に並んだ。
耳につけているのはいつもの赤い補聴器。
耳鼻科の先生に頼んで、今日のために調整してもらったそうだ。

リュー先輩も俺の前に立つ。
今日はそこまで不機嫌じゃなさそうだ。