ノイズの向こうできみは歌う

土曜日。
快晴。

絶好の文化祭日和だ。

「ぐりぐらセット二丁ー」
「はーい! アリスセット三つ持ってってー」

ありがたいことに、うちのクラスの絵本カフェは盛況だ。

盛況ではあるけれど……。

「なーにむくれてんの。ジョージ」
「むくれてなんかねーよ」

料理を運ぶ途中、看板を持って呼び込みをしていた山都に捉まった。

別にむくれてるわけじゃない。
明日はライブだから、今日の当番に多めに時間を割かれたことも、むしろ感謝している。

「その格好、似合ってんじゃん」

それだ。

エプロンだけと聞いてたはずなのに、なぜか黒い蝶ネクタイまで用意されていた。
おまけに髪までいじられて、なんかホストっぽくなってる。
他の男子はノリノリで、俺の反対意見など却下された。

「当番終わったらソッコー髪洗ってやる」
「えーなんでー? かっこいいのにー」

……落ち着け俺。
山都はなにも考えずに発言してるだけだ。

落ち着けー、落ち着けー。

俺はちらりと山都を見下ろす。

「……お前も似合ってんじゃん」

水玉エプロンだけだと思ってた女子も、ブレザーのネクタイを赤いリボンに替えて、頭の黒いカチューシャも可愛らしい。

正直に言う。
山都可愛い。

まぁそこは口には出せなかったけど、似合ってるっていう言葉だけで山都は嬉しそうに笑った。

「当番、一時までだっけ?」
「おう。あとちょっとだ」
「じゃあそのあと一緒に回ろうよ」
「は?」

なんて?
文化祭を?
山都と回る?

そんな贅沢許されていいのか……?