ノイズの向こうできみは歌う

本当に、リュー先輩は山都のことを考えている。

リュー先輩だって親の離婚で戸惑ったこともあっただろうに、妹を最優先させている。
まったく、これだからシスコンは……。

「山都が、音楽を続けたいって言うのなら、俺は付き合いますよ」

俺が静かに言うと、リュー先輩はゆっくりと顔を上げた。

「あ、もちろん山都が望めばですけど。俺、山都とリュー先輩とバンド組めて楽しいんです。エシオンは俺に音楽の楽しさを思い出させてくれた……。文化祭で終わりなのかなって思ったけど、やっぱり他のやつと組むなんて考えられないんですよね」

音楽を続けたいと思う。
だけどそれはエシオンだからそう思えたのだ。
たとえ山都がこれで終わりだとしても、やるならたぶん、家で一人ですることになると思う。

叶うのならば、山都と続けていきたいけど。

リュー先輩は頬杖をついたまま、じっと俺を見ていた。
やがてぽつりと言う。

「エシオンを組んで良かった」

それは俺にとってなによりの褒め言葉だ。
他でもない、リュー先輩に言ってもらえたことを嬉しく思う。

なんでもさらりとこなしてしまうリュー先輩だけど、やっぱりリュー先輩も不安だったんだろうか。
わざわざこんな時間に俺の家を訪ねてきて、こんなことを言いに来るなんて。

考えてみれば、リュー先輩だって俺と二つしか変わらないんだ。
完璧に見えて、迷うこともあるのかもしれない。
ならこんなリュー先輩は貴重だな……。

相変わらず、リュー先輩は頬杖をついて、不機嫌そうだ。
いまならそれが地顔だって分かる。
不機嫌そうな顔で、優しさとか思いやりとかを秘めてるのかもしれない。

まぁ山都には、終始デレデレなわけだけど。
そんな顔を俺に向けられても、困るだけだけどさ。

それにしても、リュー先輩は本当に山都のことばっかだ。

「リュー先輩、あんまり山都のことばっかだと逆に山都に心配されますよ? 『いい人見つけて幸せになってー』って」
「あ?」

リュー先輩の眼光が鋭くなる。

やばい、地雷だったかも……。

「由真の幸せが俺の幸せだ。いや、でも由真の男は俺が認めたやつじゃないと駄目だ。俺より頭が良くて、由真を守れるくらい鍛えていて、音楽が好きで、由真と同い年かもしくは上でも俺と同い年で……」

目がまじだ!
こえーよ!

山都に想いを伝える前に、まずはこの人に認めてもらわないといけないんだろうか。

前途多難な恋に、俺は小さくため息をついた。