ノイズの向こうできみは歌う

「うまくできそうか」
「それは、できる……と思います」

万全の準備をしていても、なにが起きるが分からないのがライブだ。
ライブは生もの。

俺はリュー先輩の真意がわからなくて、顔色を伺ってしまう。

リュー先輩はなにを言いに来たんだ?
たぶん、聞きたいのはこんなことじゃないはずだ。

そう考えていたら、リュー先輩が大きなため息をついた。

「リュ、リュー先輩……?」
「お前、由真は好きか」

思わぬ質問にびくっと体が震える。
なんだ!
山都家美里家の人間はエスパーか!
人をビビらせる質問が好きなのか!

「や、えと……」

なんと答えるのが正解だろうか……。

好きです?
いや殺される……。

違います?
いやいや殺される……。

友達として好き。
これだ!

「いやこの際どっちでもいいんだ。由真と音楽やるのが好きであれば」

一秒間で目まぐるしく考えたのに、その焦った時間を返してください。

そんなことを思ったけど、リュー先輩の表情を見たらなにも言えなくなってしまった。

「リュー先輩どうしたんですか? なんか変ですよ?」
「聞いたんだろ? 由真が文化祭終われば学校やめるって」

どきりとした。

リュー先輩が一人で俺を訪ねてくるとしたら、いまはその話題しかない。

「……はい」

リュー先輩はテーブルに頬杖をつく。

手つかずのグラスに水滴がついていた。
リュー先輩はなにを言いたいのだろう。

「父さんたちはいい顔しないっつーか由真が傷つくのを心配してるようだけど、俺は由真は音楽をやめるべきじゃないと思っている。才能あるっていうのもあるけど、由真が一番いい顔をするのが歌ってるときなんだ。学校をやめて、音楽まできっぱりやめるなんてしたら、由真はいったいなにを支えに生きていったらいいんだ」