ノイズの向こうできみは歌う

「ねぇもっかい言って! あたしの歌が好きだって!」
「はぁ!?」
「ねぇおーねーがーいー! じゃないと文化祭で思いっきり歌えない!」
「バカ言ってんなバカ。ほら早く帰るぞ」
「ジョージのいけずー」

そんなに軽々しく好きとか言えるか!

……まだ、ちゃんと気持ちを伝える勇気がない。
でも時間はそんなに残されてないんだ。
文化祭が終われば山都はこの学校からいなくなってしまう。

家が向かいだから会えなくなるわけじゃないけど、やっぱり同じ学校じゃないというのは大きい。

覚悟を決めなければ。

     *

文化祭前日の夜だった。

最後の練習を終えて、帰宅して夕飯を食べ終えたところにインターホンが鳴った。

「はーい」

ドアを開けた先にいたのは――。

「リュー先輩?」

不機嫌な顔をしたリュー先輩だった。

リビングのテーブルに着いたリュー先輩は、眉間にしわを寄せたまま口を開こうとしない。
俺はとりあえず、その前に麦茶を置く。

「あの……なんかあったんすか……?」

沈黙に耐え切れず、俺は尋ねた。

兄貴ー、早く帰ってきてくれー。
俺一人じゃこの人対処しきれねぇよー。

「明日」
「はいっ!」
「本番だな」

なにかと思えばそんなことだ。
思わず身構えてしまったけど、その先になにが続くんだろうか……。