ノイズの向こうできみは歌う

よしオーケー。ひとまずセーフ!

それにしても恥ずかしいセリフではあるけど。
告白よりかはマシだ。

「ふふっ」

一人で焦りまくっていると、笑い声がした。

「……なに」
「いやね。ジョージがメンバーになるのいやだ、って言ったときのことを思い出してた」

山都は柵にもたれ掛かる。

「あたしね、自分の歌が好きじゃなかったの」
「は?」

あんなにすごい歌なのに、どうして。

山都はくすりと笑って続ける。

「正確に言うと、好きなときもあったり、嫌いなときもあったりしてた。音楽は好きだけど、どんなにがんばっても百万人の心に届くような歌を歌えるわけじゃない。目の前の人は今は楽しんでくれてるけど、通学時間に毎日聞いてくれるわけじゃない。どうがんばっても限界があるのなら、『雑音ノイズ』でいいやって思ってた。でも」

そこで言葉を切って、山都は俺のほうを向いた。

その目はどこまでも穏やかだった。
普段の騒々しさからは想像もつかない、朝の海のような穏やかさだった。

「ジョージが雑音なんかじゃないって言ってくれて、すごく嬉しかった。いつか歌えなくなる日がきても、『今』あたしが歌ってることは無意味なんかじゃないって思えたの」

あのとき、山都にそう言ってなかったらどうなってたんだろう。

山都はきっと、俺の言葉がなくても歌ってた。
俺が山都を変えただなんて、大それたことは思えない。

それでも、少しでも山都の力になれたということが、こんなにも俺の胸を熱くさせる。

俺は山都の顔に手を伸ばした。

「あだっ!」

そして思いっきりデコピンすると、山都はそんな色気のない声を出してしゃがみ込む。

「なにすんのよ!」
「バーカ。お前はそんな小難しいこと考えずに、思いっきり歌っときゃいいんだよ。……ちゃんと届くから」

照れ臭くて山都の反応を見ることはできなかった。

背を向けて扉へと向かう俺に、山都は駆け寄ってくる。