ノイズの向こうできみは歌う

そんなものなのかもしれない。

大事なものは、人それぞれだ。
俺が完璧な音楽を捨て切れなかったように、音楽だったり、妹だったり、一番にして悪くはない。

それがなんであろうとも。

「ていうか松永先輩、美里兄妹の事情に詳しすぎじゃないですか?」
「それ言うー? 男の嫉妬はみっともないよー?」
「今さらです。ていうか煽ってるでしょう、明らかに」
「あ、ばれた?」

やっぱり煽ってたのかよ!

この先輩が卒業するまで、俺はヤラレキャラを脱却できないような予感がした。

     *

先生の話が聞こえないし、クラスメイトにも気を遣わせたくないからと、山都はその次の日も休んだ。
放課後になったら来ているかもしれないが、斜め前の山都の席はがらんと空いていた。

その日、日直だった俺は、日誌を出しに職員室へと向かった。
今日はちゃんと日直だ。
押しつけられたわけじゃない。

「おう、松橋。おつかれさん」

担任は軽い調子で日誌を受け取る。
そして引き出しをガタガタと開けた。

「松橋は山都と家が近かったよな?」
「はい、まぁ」

そう返事をした俺に、担任はプリントを差し出してきた。

「悪いがこれを届けてくれないか? 一応宿題やっとかないといけないから」

カゼというわけじゃないから、多少なりとも宿題を出しとかないといけないってことか。
担任なら当然、山都の耳のことは知ってるか。

担任は椅子を回して机に頬杖をつく。
続いた言葉に俺の思考は止まった。

「山都もなぁ、せめて三学期までいられりゃいいのになぁ」

なんの話だ……?
三学期まで?
その言い方じゃあまるで……。

担任が俺を見上げる。

「あれ、聞いてるだろ? 文化祭が終わったら山都、学校やめるって」

寝耳に水だった。