ノイズの向こうできみは歌う

「たっだいまー」

帰ってきた山都の手には、またもお盆が握られていた。

「リューがマンゴープリン作ってたからもらってきた! あたしも生クリーム泡立てるの手伝ったんだよー」

遅いと思ったらそんなことしてたのか。
山都は鼻歌を歌いながら、プリンを冷蔵庫に入れる。

ふと山都のお母さんが目に入った。
山都を見ている優しいその顔で、ふと一つの考えが浮かんだ。
もしかしたら、山都のお母さんは俺と話をするためにリュー先輩に足止めを頼んだのかもしれない。

山都は本当に愛されている。

山都が帰ってきて、夕食となった。

『ジョージ君、苦手なものってある?』
「いえ、ないです」

俺は横に首を振る。

『それは良かった。いっぱい食べてねー』

山都のお母さんは、相変わらず手話と口語と同時だ。

出された料理に目を瞠った。
さすがリュー先輩のお母さんだ。
すっげーうまそう。

「ここだけの話ね、あたしお母さんの料理が一番好きなの。リューは二番」
『あら、嬉しいけどそれ理宇が聞いたら泣いちゃうわよ?』

自然と名前が出てくるけど、リュー先輩はここにはいない。
もう父親が帰ってきてるそうで、そんな日は一緒に食事をしないらしい。

それも家族の一つの形なんだろう。
近づきすぎず、離れすぎずで山都家と美里家はうまくいっている。

『ジョージ君は水前町出身なんだっけ?』
「あ、はい」
『今はお兄さんと二人暮らし?』

俺は頷く。

「仕事が夜までなんで、割りとすれ違い生活ですけど」

山都のお母さんの目がきらりと光った。

『じゃあ、たまにはうちに食べに来なさいな』
「へ?」
「あー! それいい! そうしなよジョージ!」
「いやっ、俺は……」
『ごはんは一人で食べるものじゃないわ』

目を伏せて言う様は、『母』だった。

いや、ちゃんと山都のお母さんだってわかってはいたけど、母親の存在を感じたなって。

夏休みに帰省したとき、もっとちゃんと親孝行してくればよかったと反省した。
山都のことが照れ臭くて、バンドのこともちゃんと話せなかった。
ずっと心配してくれてたのに。

次に帰るときは、ちゃんとしよう。

とりあえずは。

「はい。ありがとうございます」

お言葉に甘えさせてもらうことにしよう。

山都と山都のお母さんは、満面の笑みを浮かべた。