ノイズの向こうできみは歌う

山都はけらけら笑う。

ほんとに思ってない。
ただ一生懸命音楽をやろうとしてるやつを笑う趣味なんて、俺にはない。

『あのな、俺はお前の歌もギターも本当にすごいと思ってるんだ』
『時間がないのはわかるけど、焦んな 焦んなくていい』
『俺がついてるから』
『リュー先輩も』

文字を打っては見せ、打っては見せ、で山都に話しかけるけど、最後の文面を見つめたまま山都は動かない。

「山都……?」
「あっはははは!」

突然笑い出した彼女にびくっとなる。
横向きになって笑い続けてるけど、俺、そんなに笑うようなこと言ったか……?

はー笑ったー、と山都は、身を起こす。

「ね、喉触っていい?」
「は!?」

いきなりなに言ってんだこいつ。

「ベースってさ、全身にビリビリこない? 骨伝導って言うんだっけ? ジョージの声聞きたいけど、今こんなんだからさ。感じさせて?」

……その言い方はずるい。
意識してんのはやっぱ俺だけかよ。

俺はぐいっと顎を上げた。

「おら、好きにドーゾ」

山都がベッドの上を移動してくる。
ひんやりとした指先が、俺の喉に触れた。

「なんか喋ってよ」
「なんかって言われてもな……」

急に言われても、なにを喋ったらいいものか。

俺はスマホをいじった。
折角喋っても、伝わらなければ意味がない。

画面を見て、山都はわかったようだ。

seasonsの人気曲。
この曲でファンになったとか、励まされたとか言う人の多い曲。
文化祭で一曲目にやる予定の歌でもあった。

その歌詞を画面に表示させる。