ノイズの向こうできみは歌う

インターホンを鳴らすと、出迎えてくれたのはリュー先輩によく似た女性だった。
長い黒髪をうしろで緩く結んで、切れ長な目が俺を捉えてふっと笑みを作る。

山都とリュー先輩のお母さんだろう。

「ジョージ君ね。話は由真から聞いてるわ」

おい山都。
お前、母親に俺のことなんて話してるんだ。

どうぞどうぞと通される。
中身はリュー先輩っぽくないな。

「由真寝てるから、ごゆっくりどーぞ」

山都のお母さんは、俺を山都の部屋に押し込んでぱたんとドアを閉めた。

なんつーことを言うんだあのお母さん!
寝てる山都となにをごゆっくりしろと!?

山都だ!
中身は山都!
確定!

「あはは、お母さんがごめんね」

振り返ると、ベッドに横になった山都がこっちを見ていた。

起こしちまったか。
ちょっと顔に生気がない。

「耳は」

俺は自分の耳をとんとん叩いた。
山都はゆるゆると横に首を振る。

学習机のイスを引っ張り出し、ベッドサイドにやって俺は座った。
ポケットからスマホを取り出す。

『起こしちまったか?』
「ううん、リューのメッセで起きた。声の大きさ、変じゃない?」

俺が大丈夫と首を振ると、山都はほっと息をついた。
その表情に、胸がぎゅっと掴まれた感じがする。

山都はいま、音のない世界にいるんだ。
どんな気分なんだろう……。

「練習、途中になっちゃってごめんね。片づけ大丈夫だった?」
『二年の先輩たちが手伝ってくれたから。お前のギターはリュー先輩んちにあるから』
「ありがとね」

それきり山都は口を閉ざしてしまった。

話を聞いてやってくれと言われたけど、なにを話せばいいんだろう。
励ますのも、慰めるのも、なんか違う気がする。

「あーあ! 情けないよねー。張り切りすぎて、こんなになっちゃうとか」

がばっとタオルケットから腕を出すと、山都は叫んだ。
そして俺を見上げる。

「バカだと思ってるでしょ」
『思ってねぇよ。いつもは思ってるけど』
「ひっどーい!」