ノイズの向こうできみは歌う

「おう、ありがとな。せっかくだから聞いてくか?」
「いいんすか!?」
「もちろん!」
「やった!」

これは……心底リュー先輩に惚れ込んでるやつだ……。
そしてリュー先輩は顎で使っている。
三人とも、それでいいのか?

でも『美里』と呼ぶのを許してんのか。
舎弟だけどお気に入りなんだろうな。

「あの、セッティングありがとうございました」

この三人の先輩が機材を運んでくれたのだ。
俺がお礼を言うと、三人の目が一斉にこっちを向いた。

『大』の先輩にがしっと肩を組まれた。

「おい、一年ボーズ。下手な演奏したら許さねーからな」
「美里先輩の晴れ舞台だぞ。わかってるだろーな?」
「うまくやれよー」

圧が……。
この人たちほんとリュー先輩を好きだな!

その背後からリュー先輩が三人にゴンゴンゴンと拳骨を落とす。

「おら、黙って見てろ」

頭をさする三人は、「はーい」と返事をして、大人しくパイプ椅子を出してきて座った。

……庇われた?
俺もリュー先輩の『内側』に入ってるのか?

「ジョージー! 早くー!」

ステージを見上げると、山都はもうギターをかけて準備万端だ。

ハイハイ、ちょっと待ってろ。

体育館となると、やっぱ音の響きが違う。
教室やスタジオはもちろんのこと、ライブハウスとは構造からして違うんだ。

しかも当日はたくさんの生徒や外部の人が入る。
服が音を吸って、また違って聞こえるだろう。
どうしたものか……。

「ジョージ! どう!?  どう!?」
「あー、ちょっとアンプいじるわ。んでお前は半音上げ気味に歌ったがいいかも」
「そか! よしもう一回やろう!」

四曲ぶっ通しでやったのにまだ元気なのかよ。
中学時代はこれくらい難なくこなしてた俺でも、久々のステージでそれなりに息上がってるのに。

「由真、飛ばしすぎるな」
「だーいじょーぶだよーう! ジョージいける!?」
「……おう」

元気っていうか、オーバーヒートしてるような……。

でも早く早くと山都に急かされて、俺は自分の立ち位置に戻った。

リュー先輩も心配そうな顔をしている。
それでもスティックを鳴らしたから、俺はベースを鳴らした。

だがそれもすぐに止まる。
ギターが入ってこないのだ。