ノイズの向こうできみは歌う

文化祭を来週に控え、新学期から校内はなんだか浮き足立っている。
どのクラスも夏休み中に出し物の準備を進めてきて、最後の追い込みに入った。

うちのクラスでは、絵本カフェをやる予定だ。
「ぐりとぐら」とか「3びきのくま」とかに出てくるお菓子とかスープを、それっぽく出すらしい。
俺は調理じゃなくて接客の方だから、詳しい作り方はわからない。

「そういう本が出てるんだよー。絵本から飛び出したようなの! まんまなの! すっごく可愛いんだよー」

山都がそう教えてくれるけど。

「お前も接客だろ」
「えへ。うちじゃリューのごはんがおいしいから」

スーパーシェフ・リュー先輩を擁する山都家(いや美里家?)では、料理する必要のなかった山都だ。
案の定、調理係じゃなくて接客係に回されたようだ。

「ってことはお前もあのエプロンつけんのか?」
「そだよー。もう完成してるよん」

接客係は、男女別でお揃いのエプロンを作っている。
男子は腰に巻くタイプの黒のシンプルなもの、女子は赤地に白の水玉でフリルのついたものだ。

あれを着るのか……。

「あー! あたしには似合わないって思ったでしょ! ジョージのいじわる!」

なっ……!
逆だ逆!

でもそんなこと、言えるはずもない。
俺はぷんすか怒る山都の後ろを、ただついていくしかなかった。

体育館にはすでにリュー先輩が来ていた。

「おせーぞ」

じろりと睨みつけるのは、もちろん俺だけ。
理不尽だ!

山都はステージに立てるのがよほど嬉しいのか、ぴょんぴょん飛び跳ねてリュー先輩に纏わりついている。

「二時までバレー部は外練なんで、それまでに片付けてください。僕、他のとこの見回りあるんで、終わったら生徒会室まで報告お願いします」
「おう、わかった」

二年の文化祭実行委員かな?
リュー先輩にぺこりと頭を下げると、小走りで体育館を出て行った。
今の時期、実行委員は忙しいだろうな。

「わー! ライブだー!」

大声に振り返ると、山都はステージによじのぼっているところだった。
バッカお前……!
脇の控え室から行けよ!

でも気持ちはわからんでもない。
ステージにはすでにアンプやドラムが用意してあった。
ステージに立つということは、それがどこであろうとも興奮するものだ。

「美里センパーイ。マイクのセッティングもオッケーでーす」

音響室から男子生徒がぞろぞろと出てくる。
大中小。
スリッパが緑だから二年生か。