ノイズの向こうできみは歌う

山都の掛け声が合図だった。
リュー先輩がドラムスティックをカッカッカと鳴らす。

防音設備の整ったスタジオでは、やっぱり教室とは響きが違う。
本番は体育館のステージだ。
どこまでうまく山都の歌とギターを響かせられるか……。

あぁでも、やっぱりこの二人と演奏するのは気持ちいい。

山都の歌は言わずもがな、ギターもここってときに来てくれる。

リュー先輩のドラムは正確に刻まれていて、でも合い間合い間にスティックを回してみせたりして、意外と余裕がある。
まぁリュー先輩だもんな。
なんでも軽くこなしてしまいそうだ。
時折笑みを見せるのは、ちょっと意外だったけど。

「んあー! ダメだ! 間奏のリフレインやっぱちょっとずれる!」

最後の一音を弾き終えて、山都は叫んだ。

「二フレーズ目をちょっと食い気味に弾くといいのかも。あと大サビ行く前に、目で合図してくれるとやりやすい」
「そっか……二フレーズ目……」

ぶつぶつ言いながら、山都はギターを鳴らす。

こいつのこういうところは、ほんとすごいなと思う。
正直、さっきのとこは少しずれてても支障がないかなと俺は思っていた。
許容範囲というか。

だけど山都は、不安要素は潰しておきたいと言う。
これこそがノイズの人気たる所以だったんだろうな。

「ジョージごめん! 二番のサビからもう一回いい?」

そんな俺の視線に気づかず、山都は勢いよく言う。

「もちろん」

俺がそう言うと、山都もリュー先輩も驚いた顔をした。

え、なんだ?
俺なんか変なこと言ったか?

あとから聞いた話、このとき俺は、出会ってから初めて笑っていたらしい。

     *

二学期が始まった。

夏休み最後の夜、英語の宿題だけ終わらせてなかった俺は、リュー先輩に罵倒されながらもなんとか終わらせた。
おかげで新学期というのにもうHPはゼロだ。
二日目の実力テストがまた追い討ちをかけた。

「ジョージ元気なーい! さぁやる気出して!」

ばちこーん! っと思いっきり背中を叩かれて、俺は前につんのめる。
いつものことになりつつあるな、山都!

「でもほんとに元気出して? これから体育館だよ?」

山都に下から覗き込まれて、俺はぐっと怯んだ。

そう言うな。
俺だって楽しみにしてたんだ。