ノイズの向こうできみは歌う

「真吾さん!」

俺は彼の背に叫んでいた。
真吾さんは驚いた様子で振り返る。

伝えなきゃ。
俺が思ってること。

「文化祭……よかったら来てください。ライブ、やるんです」

伝えたかったのはそんなことじゃない。
ありがとうとか、すみませんとか、言いたかったことはいっぱいある。

だけど真吾さんは察してくれたようだ。

「あっ、でも受験勉強で忙しいとかだったら全然いいんで! たぶんスマホかなんかで撮っとくだろうから、それ見てもらうだけでも……。データ送るんで!」

くすりと笑ったその顔が、それを物語っている。

あぁ、受験生を気軽に誘うんじゃなかった。
真吾さんは優しいから気にしてしまうだろ……。

「いや、行くよ」

案の定、帰ってきた返事はそんなものだった。

「みんな、お前がどうしてるか気になってたんだ。俺らはジョージのベース、好きだったんだしな。今のお前がどんな音を鳴らすのか、見てみたい」

伝わった、と思った。

ごめんもありがとうもなくても、俺がスコアを好きだったことはきっと伝わった。

「……ありがとうございます」

俺は涙を堪えるのに必死で、そんな言葉しか出てこなかった。
真吾さんはそれさえもわかっているようで、もう一度「じゃあな」と言うと、今度こそ去っていった。

覚悟は決まった。
やることは一つだ。

   *

盆休みを終えて戻ってきた俺は、バンドの練習に明け暮れた。

「ジョージどうしちゃったのー? なんかあった?」

英語科棟での練習の合い間、山都にそんなことを言われる始末だ。

でも口にしてやんない。
わざわざ言うのなんて恥ずかしいだろうが。
お前に最高のステージをやるため、全力を尽くすなんて。

「別に。本気出そうと思っただけだよ」
「ふーん、そっか」

そんな相槌を打ちながらも、山都はどこか嬉しそうだった。


だけど、物事はそんな順調にもいかなかった。