ノイズの向こうできみは歌う

「久しぶりだなぁ。元気にしてたか? 市内の中学に行ったって聞いてたけど」

話しぶりもあのときのまま。穏やかで相手のことを第一に考えている。

その表情に、苦笑が浮かぶ。

「どの面下げて、って感じだよな」
「え……?」
「怒ってるだろ? 俺らのこと。最後のライブ、あんなことになっちゃったから」
「そんなこと……」

まさか真吾さんから謝られるなんて、思わなかった。

あれは俺が全部悪かったんだ。
メンバーの実力を顧みず、自分の理想ばかりを押しつけていた。

そんなやつ、見限られて当然だ。

「自分が悪いって思ってないか?」

ぎくりとする。
今まさに思ってたことを言い当てられて、俺は顔を上げた。

「こんなこと言ったらまたお前は気にするかもしれないけど、俺らはもっと努力できたんじゃないかって思うんだ。ジョージの言うことはいつも、もう一歩踏み込めばより良くなるってものばかりだった……。年上だとか、音楽歴とかつまんない意地張ってないで、もっとお前の言うこと聞いときゃ良かったよ。そしたらきっと、もっと楽しく演奏できたのに」

途切れ途切れに話す真吾さんは、辛そうだった。

なんで真吾さんがそんな顔するんだよ……。

スコアが解散することになったのは、ずっと自分のせいだと思っていた。
俺があそこまで完璧さに固執しなければ、今でもみんなで楽しく演奏できてたんじゃないかって。

でも。

真吾さんは、そうじゃないって言ってくれるんだろうか。

「バンド」

ぽつりと真吾さんは言った。

「ベース、弾いてる?」
「……最近、また。弾き始めました」
「そっか」

ジワジワとセミの鳴き声が聞こえた。
日はもう半分沈んでいる。
セミたちはいつまで鳴き続けるんだろうか。

「俺らもな、大学でも音楽続けようって言ってるんだ。今は叩けてないから鈍っちゃってるかもしれないけど……また、ステージに立てるように」

そう言って笑う真吾さんは、夕日よりも眩しく見えた。

あのことを引きずっていたのは、俺だけじゃなかった。
向こうも同じように傷ついていた。

そしてそれでもまた、音楽を続けようとしている。
それだけでもう十分じゃないか。
たとえ一緒に弾くことはなくても。

じゃあなと言って、真吾さんは俺に背を向ける。
まだ、伝えてないことがある。