ノイズの向こうできみは歌う

「そういやリュー先輩は? 俺らの勉強見てたけど、大丈夫だったのか?」
「自己採点では九割五分いったって言ってた」

超人だな……。
さも当然のように山都は言うけど普通じゃないからな?

ていうか答案用紙回収されるんだから、自己採点って、問題覚えてて後からやったってことか……?

「さすが、医学部目指してるだけあるな」
「まあね!」

鼻高々に言うけれど、おまえのことじゃないぞ。

山都はかばんをあさると、クリアファイルを取り出した。
中から紙切れを取り出して、俺の鼻先にぴっと近づける。

「ところで、ライブに行きませんか!」

俺は紙切れに焦点を合わせた。
紙切れだと思ったものは、チケットだった。
そこには、

『ROCK JACK in MUSICA』

と書かれている。

「行かない」
「えー!? なんでー!?」

なんでってなんで行くと思ったんだ。
俺は山都とバンドをやらないと伝えたばっかだし、ムジカにいい思い出はない。
行く理由がないだろ。

「なんででも」
「えー行こうよー。絶対楽しいよー?」

こいつ……テスト終わってハイになってるな……?
体育祭のときはなんだったんだ。

そう、俺はあのときのことをまだ引きずっている。
あのときの山都は、いつになくおかしかった。
あんなにしおらしい山都は見たことがない。

ベースのことを考えて、自分のことで精一杯だったけど、ちゃんと山都に聞くべきだったんじゃないだろうか……。

「とにかく! 土曜の四時に迎えに行くねー!」
「あっ、おい!」

俺の胸ポケットにチケットを突っ込んだ山都は、あっという間に走り去ってしまった。
まったく……。

山都が普通にしてるから、聞けないというのもあった。
ただあの日ということで、ナーバスになってただけかもしれないし。
元気にしてるならまぁいいだろう。

ともかく。

「これどうしよう……」

俺はチケットを手にうな垂れた。