ノイズの向こうできみは歌う

「もー、ジョージセクハラー」
「だから悪かったって言ってるだろ!」

こんなことリュー先輩にばれたら殺される。
俺は昼休憩が終わるまで、必至に口止めする羽目になった。

山都は閉会式までには帰るという。
休んだ手前、クラスメイトに会うのは気まずい、と。

「ジョージ」

昼休憩が終わるちょっと前。
グラウンドに戻ろうとした俺を山都は呼び止めた。
山都は笑ってはいなかった。
どこか思い詰めた表情をしている。

「ベース、やっぱりやる気はない?」

忘れかけていた問いに、俺は固まった。

いや、本当は忘れてなんかいない。
あの日から、気がつけばベースを入れてある押し入れを見つめている自分がいる。

そんな俺の思いを知ってか知らずか、踏み込んでくる山都。

本当は、本当は俺は――。

「……あぁ」

俺はそれだけ言うので精一杯だった。

山都は「そう」と小さく呟いた。

午後の部の始まりを告げるアナウンスが聞こえた。
がんばってね、と山都は言う。
俺は手を振る山都に背を向けた。



ちゃんと聞いておけば良かったんだ。
山都が体育祭を休んだ本当の理由も、思い詰めた表情のわけも。

後悔は、あとからやってくる。

   *

勉強合宿のおかげで、中間テストはまずまずの結果を残せた。
もともと英語以外は、それなりに成績良かったんだ。
英語が伸びたおかげで、総合順位もそこそこいいとこいった。

「おー! 勉強合宿の効果だね!」
「だからなんでおまえは勝手に覗くんだ!」

いつぞやのように成績表を後ろから覗き込まれ、俺は大声を上げた。
まったく……油断も隙もない。

「おまえは大丈夫だったのかよ」
「あたし? 学年二十番内には入れたよ?」

まじかよ……。
そういえば、こいつはリュー先輩の妹だった。
頭のできはいいらしい。

俺はふと気がついた。