ノイズの向こうできみは歌う

「それで、こんなとこでだらだらしてちゃいけないだろ」
「ジョージの活躍聞こえてたよー。一位だってね」

放送部のアナウンスが聞こえていたのだろう。
山都は寝転がったまま、くしゃっと笑って俺を見上げている。

「ジョージ、お弁当持ってきてる?」
「いや。昨日、リュー先輩に持ってくるなと脅された」

昨日の夜のことだ。
突然電話してきたかと思うと、低い声で念押しされたのだ。
たぶんリュー先輩が弁当を作ってくれるってことなんだろうけど、なんであんな脅すような口調だったんだ……。
しかもあれから連絡ないし。
このままじゃ昼休憩が終わっちまう。

山都は身を起こして近くに置いてたかばんを引き寄せた。

「じゃーん。リュー特製お重でーす」

中から紫の風呂敷包みが現れる。
俺は目を見開いた。

「競技の準備で、リューは一緒に食べられないだろうからって。ジョージと食べるように作ってくれたの。なにから食べる? おにぎり? 玉子焼き? ハンバーグ?」

言いながら山都はお重を広げていく。

さすがリュー先輩。
体育祭の弁当の定番を抑えつつ、彩り鮮やかで見た目もいい。
そして栄養価も高そうだ。

「え、なに。食べていいの?」
「もちろん。そのために早起きしてがんばったんだし。リューが」

……まぁそこは山都じゃないよな。
リュー先輩が作ってくれるのは予想してたけど、まさかお重だとは思わなかった。
いつもの山都の弁当を考えると多すぎるくらいだけど、俺も一緒となると丁度いいだろう。

俺はてんこ盛りの取り皿を山都から受け取った。
盛り過ぎだ。

「でも、リュー先輩がおまえと昼一緒にするのを許すとは思わなかった」
「んー? 休むって言ってる手前、クラスの子たちとお昼は取れないからねー」

そもそもなんで欠席なんだ?
具合は悪くなさそうだし、山都は体育祭とか好きそうだ。
でも、なんとなくいつもと雰囲気が違う気がする。

「おまえ、どっか悪いの?」

山都の肩がぴくりと揺れた。
あれ、聞いちゃいけないことだったかな。

そこで俺はハッとする。

「あー……悪い。ごめん。言わなくていい」

女子の日って思い至らなかったことが恥ずかしい。
仕方ないだろ、周りに親しい女子なんていなかったんだから!

顔を赤らめる俺を見て、山都はきょとんとした。
そうしてぷっと笑い出す。
俺がなにを考えたか察したようだ。