ノイズの向こうできみは歌う

その後のゴールデンウィークは、何事もなく過ぎていった。

リュー先輩の指導は相変わらず厳しかったが、飯がうまくて乗り切ることができた。
がっちり胃袋を掴まれている……。

さて、連休開けて次の日曜日。
中学に入って初のイベント、体育祭がやってきた。

「いけー! 松橋ー!」

声援に推されてゴールテープを切った。

テンションの高い応援席へと戻る。

「松橋くんって足速かったんだねー」
「いや、短距離だけっていうか」
「照れんなよー」

こんな風に普通に受け入れられるなんて、入学したばかりの自分じゃ考えられなかった。
原因は自分にあったのはわかってる。
今でも百パーセント人を信じられるようになったわけじゃない。

それでも、山都の存在に救われてる部分はあった。

そこでようやく俺は気づく。

「あれ? そういや山都は?」

山都としゃべってることの多い女子たちに聞くと、口ごもって目配せをした。

「あー、なんていうか……。ある意味サボリ?」

なんだそれ。
こういう年中行事では、一番にはりきりそうなやつなのに。



「やっぱりここにいた」

上から覗き込んだ俺を、山都は見上げる。

屋上の給水塔の影。
制服姿の山都は、寝転がってギターを弾いていた。
アンプには繋いでないから、小さなメロディーが屋上に響く。

「あージョージだー。おはよー」
「もう昼だ昼」

そういえば朝から会ってなかった。
こいつ、グラウンド自体に来てなかったんじゃないか……?
制服のままだし。

「堂々とサボリかよ」
「ちゃんと欠席届出してるもーん」

そう言って山都はぴらぴらと欠席届を掲げた。
……ちゃんと受理されてる。
まぁサボリじゃないのはわかった。