ノイズの向こうできみは歌う

『美里由真』

山都の写真の下には、そう記されていた。

「そういやジョージって、お兄さんと二人暮らしなんだ、っけ……」

山都がひょこっと顔を覗かせる。
その声が不自然に途切れた。

「あー……。しまっとくの忘れてた」
「お前……これ……」

山都は俺のところまで来て座った。
ローテーブルに肘をつき、アルバムを引き寄せる。
ページをなぞる山都は、表情を読むことができなかった。

「小三までは『美里由真』だったの。親の離婚でね。山都はお母さんの苗字。リューとあたしは、実の兄妹だよ」

俺はなにも言うことができなかった。
いとこバカとは思ってたけど、確かに度が過ぎる部分はあった。
実の兄妹なら納得だ。

「でも……いとこって」
「元々お母さんとお父さんって、いとこ同士なの。だから正確に言えば、あたしたちは、はとこ。説明がめんどうだから、いとこで通してるの」

まぁ小学校から一緒の子たちは知ってるけどね、と山都は続ける。

「お母さんとお父さんって小さい頃から仲良かったんだって。同い年だし趣味も合うし、よく一緒に遊んでたって言ってた。付き合うようになったのも自然の流れだったって。……でも、家族になるっていうと、話は違った。近すぎたんだね。あたしが低学年の頃はいつもケンカばかりしてた。離婚して、今の形でようやく落ち着いたんだよ」

思いもよらない事実に、俺は俯いた。

親が離婚するなんて、相当なできごとじゃないか?

でも山都は、いつも笑っていた。
三年経ってるとはいえ、山都はどんな思いで乗り越えてきたんだろうか……。

困ったような笑顔を山都は俺に向ける。

「そんな顔しないでよー。すぐ隣に住んでるから、淋しいと思ったことはないし。ギターもあるから楽しいよ」

リビングの片隅には、山都のテレキャスがスタンドに立てかけられている。

山都はギターと歌が好きだと言っていた。
それは単なる趣味ではなかったのだろう。
それこそ、心の支えといってもいいような……。

「おまえ、ほんとに音楽が好きなんだな」

結局言えたのは、そんな大したことのない言葉だった。
もっと他になにかなかったのか。

それでも山都は一瞬きょとんとして、それからにっと笑った。

「当然」

それからすぐにリュー先輩が戻ってきて、山都になにかしてないかどつかれた。
してないと言えばしてないけど、したと言えばした。
リュー先輩に反論することができない。

それでも、リュー先輩の作ってくれたカルボナーラはおいしかった。