ノイズの向こうできみは歌う

「リュー先輩、頭いいだけじゃなくて教え方もうまいってすごいっすね。教師でも目指してるんですか?」

一段落して、山都由真が煎れてくれた麦茶を片手に聞いてみた。
リュー先輩はちらりとこっちを見て、すぐに目を反らす。

「いや、俺がなりたいのは医者だ」

あ、なんか納得。
白衣姿がすげー目に浮かぶ。

リュー先輩は、この話は終わりだといわんばかりに立ち上がった。

「切りがいいし、そろそろ昼にするか」
「わーい! お腹すいたー!」

飛び跳ねるように、山都由真はリュー先輩の後を追う。
なにか手伝ったがいいんだろうか。

でも、リュー先輩がなにも言わないから、俺は大人しく座って待つことにした。

「あ、しまった。黒胡椒ないから、ちょっと取ってくる」

作り始めてしばらく経ったころ、リュー先輩は言った。

「ほーい。なにしとけばいい?」
「とりあえずパスタ混ぜといて。タイマーが鳴ったらザルに上げて、お湯は捨てるなよ。ジョージは由真に手出すなよ?」
「出しませんて!」

まったく、リュー先輩はどんだけいとこバカなんだ。

リビングの棚を見やると、卒業アルバムが置いてあった。
山都由真のものだろうか。
ちょっと見てみるか。

「なに作ってんの?」
「カルボナーラ! リューのパスタ料理はおいしいんだよー? ジョージ、食べれてラッキーだね!」

山都由真はカウンター向こうのキッチンから答える。

たしかに、いつも山都由真の弁当はうまそうだと思ってた。
今日食べれるなんて、ラッキーだ。
勉強まで教えてもらってるし。

敵視されてるようだけど、リュー先輩って、案外面倒見がいいのかも?

俺はアルバムをめくる。
山都由真の幼稚園のアルバムだった。
山都由真は何組かなっと。

「リュー先輩、美人で勉強もできて料理上手ってすごいよなぁ。家でも作ってんの? って家、隣か」

夜はそれぞれの家で過ごすのかもしれない。

「いやー、お母さんとお父さんが揃ってたら、一緒に食べることはあんまないけど、結構三人で食べたりするよー」

俺はその言葉を聞きながらページをめくる。
そしてふと気がついた。
今の言葉、なんか変だったような。

でも、それを聞き返すことはできなかった。
俺の目は、アルバムから離すことができなくなっていたからだ。

そのページにあったのは――。