俺の所属していたバンド『スコア』は、高校生の人たちで組んだバンドだった。
ベースの人だけもう一つ年上で、受験を機にバンドをやめてしまったからメンバーを探していたそうだ。
俺がまだ小学生ということで、最初はみんな俺が入ることを渋っていたが、演奏を聞いたら態度を変えた。
ずっと一人で練習していた。
初めて認めてもらえて嬉しかった。
スコアでは主にseasonsというバンドのコピーをしていた。
seasonsは女性ボーカルだけど、スコアのボーカルの声の伸びはよくて、男だけど透明感のある声ってことで評判が良かった。
まぁノイズほどじゃなかったけど。
家と学校とスタジオを往復する日々。
一度それで成績が下がってしまって母さんにめちゃくちゃ怒られたから、勉強もがんばった。
英語だけは伸びなかったけど。
チューナーで音程を合わせて、メトロノームに合わせてベースを弾く。
家にいる時間は大抵そうして過ごしていた。
スコアに入ってからは、それにバンドの演奏を録音したものと合わせて弾く、という練習が加わった。
最初の頃は、メンバーも褒めてくれた。
小学生なのにそれだけベースを弾けるのはすごい、と。
ムジカは実力のないバンドはステージに立てないライブハウスだ。
事前審査がある。
俺たちはオリジナル曲も取り入れて、ムジカのステージに立てるようになった。
対バンも少しずつできるようになり、オリジナル曲も増えていった。
なにがきっかけだったのかはわからない。
俺が小六に上がる頃には、バンド内の空気があまりよくないものに変わってしまっていた。
いや、きっかけはわかっている。
俺が頑なだったせいだ。
元々は同級生同士で楽しくやろうと組んだバンドだ。
『スコア』が出てる人気曲をやろう、という意味のバンド名。
メンバーを変えながら徐々にそのスタンスが変わっていってしまった。
もっとステージに立ちたい。
もっと正確に弾けるようにならなくては。
そう思ったのがいけなかったのだ。
『なんでもっとちゃんと弾けないんだよ!』
それが決定打だった。
ライブ前の、最後のスタジオ練習の日のことだ。
ボーカルの音程がずれてるとこがある、ギターソロで毎回音を外すとこがある、ドラムの締めが甘い。
全体を見れば、ささいなことだ。
俺たちはプロじゃない。
いくらでもごまかしようがあるものばかりだ。
だけど、より正確に、確実にと練習してきた俺には、許せなかった。
思わず叫んでしまった俺を見つめるメンバーの目が、忘れられない。
お前のベースは気持ち悪いと言われたのは、最後のライブが終わってすぐ、ステージ脇でのことだった。
それは事実上のクビだった。
*
あの日以降、山都由真がうるさくすることはことはなくなった。
一日休んだ次の日は普通に登校してきたが、どことなく沈んだようにも見えた。
きっとリュー先輩から俺がもうバンドをやらない理由を聞いたのだろう。
俺も俺で気まずくて、山都由真に話しかけられずにいた。
「うわぁひどい」
その声に俺は勢いよく振り返った。
後ろの席から身を乗り出して、山都由真が俺の小テストを覗き込んでいる。
「ゴールデンウィーク明けに中間テストだよ? 大丈夫?」
「おまえ……!」
こんな点数なのは英語だけだ。つーか覗き込むなよ!
ベースの人だけもう一つ年上で、受験を機にバンドをやめてしまったからメンバーを探していたそうだ。
俺がまだ小学生ということで、最初はみんな俺が入ることを渋っていたが、演奏を聞いたら態度を変えた。
ずっと一人で練習していた。
初めて認めてもらえて嬉しかった。
スコアでは主にseasonsというバンドのコピーをしていた。
seasonsは女性ボーカルだけど、スコアのボーカルの声の伸びはよくて、男だけど透明感のある声ってことで評判が良かった。
まぁノイズほどじゃなかったけど。
家と学校とスタジオを往復する日々。
一度それで成績が下がってしまって母さんにめちゃくちゃ怒られたから、勉強もがんばった。
英語だけは伸びなかったけど。
チューナーで音程を合わせて、メトロノームに合わせてベースを弾く。
家にいる時間は大抵そうして過ごしていた。
スコアに入ってからは、それにバンドの演奏を録音したものと合わせて弾く、という練習が加わった。
最初の頃は、メンバーも褒めてくれた。
小学生なのにそれだけベースを弾けるのはすごい、と。
ムジカは実力のないバンドはステージに立てないライブハウスだ。
事前審査がある。
俺たちはオリジナル曲も取り入れて、ムジカのステージに立てるようになった。
対バンも少しずつできるようになり、オリジナル曲も増えていった。
なにがきっかけだったのかはわからない。
俺が小六に上がる頃には、バンド内の空気があまりよくないものに変わってしまっていた。
いや、きっかけはわかっている。
俺が頑なだったせいだ。
元々は同級生同士で楽しくやろうと組んだバンドだ。
『スコア』が出てる人気曲をやろう、という意味のバンド名。
メンバーを変えながら徐々にそのスタンスが変わっていってしまった。
もっとステージに立ちたい。
もっと正確に弾けるようにならなくては。
そう思ったのがいけなかったのだ。
『なんでもっとちゃんと弾けないんだよ!』
それが決定打だった。
ライブ前の、最後のスタジオ練習の日のことだ。
ボーカルの音程がずれてるとこがある、ギターソロで毎回音を外すとこがある、ドラムの締めが甘い。
全体を見れば、ささいなことだ。
俺たちはプロじゃない。
いくらでもごまかしようがあるものばかりだ。
だけど、より正確に、確実にと練習してきた俺には、許せなかった。
思わず叫んでしまった俺を見つめるメンバーの目が、忘れられない。
お前のベースは気持ち悪いと言われたのは、最後のライブが終わってすぐ、ステージ脇でのことだった。
それは事実上のクビだった。
*
あの日以降、山都由真がうるさくすることはことはなくなった。
一日休んだ次の日は普通に登校してきたが、どことなく沈んだようにも見えた。
きっとリュー先輩から俺がもうバンドをやらない理由を聞いたのだろう。
俺も俺で気まずくて、山都由真に話しかけられずにいた。
「うわぁひどい」
その声に俺は勢いよく振り返った。
後ろの席から身を乗り出して、山都由真が俺の小テストを覗き込んでいる。
「ゴールデンウィーク明けに中間テストだよ? 大丈夫?」
「おまえ……!」
こんな点数なのは英語だけだ。つーか覗き込むなよ!


