Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する

でも、旬は気づいていた。

希の小さな仕草――
キスの後に、ほんの少しだけ張る肩。
夜の柔らかな闇で体が重なる瞬間、わずかに硬くなる指先。

経験の少なさ。
もしくは、ほとんどないこと。

旬は聞かない。
でも、すべてを理解している。

焦る必要はない。
急かす必要もない。

希が怖がらず、心から受け入れられる速度で、
そっと、静かに、二人の距離を縮めていく。


呼吸を合わせ、手の温もりを確かめる。
唇の感触に、心が震える瞬間。
けれど、決して押し付けない。

それが旬の優しさであり、覚悟だった。

ある夜。

旬は一人、静かな部屋で小さな箱を開ける。

中にはカルティエのネックレス。
細いチェーンに、小さなダイヤがひと粒。

主張は控えめ。
でも、確かな輝き。

(重すぎるか……?)

いや、違う。
これは、“意思表示”だ。

彼は決めている。
もうすぐNocturneで再開してから
三ヶ月の記念日。
予約したレストランで。

その夜、正式に伝えるつもりだ。

「付き合ってください」

曖昧なままではなく、
希が安心できる形で、
自分の気持ちも、未来も、全部預けるつもりで。

小さな箱の中の輝きは、
静かに、でも力強く、旬の覚悟を映していた。