Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する

当日。

部屋はシンプルだった。

白い壁。

木目の床とテーブル。

窓辺には、大小さまざまな観葉植物。

光をやわらかく受け止めるグリーンが、
部屋に静かな呼吸を与えている。

飾りすぎない。

でも、無造作でもない。

希らしい空間。

気合いを入れすぎない。

でも、いつもより少しだけ整えた。

クッションの向きを直し、
キッチンの水滴を拭き、
鏡で前髪を確認する。

インターホンが鳴る。

一瞬、胸が高鳴る。

深呼吸。

ドアを開ける。

旬が立っている。

コート姿。

外の空気をまとったまま。

ドアが開いた瞬間、
ふたりは一瞬だけ見つめ合う。

外では見ない“家の顔”。

距離の近い光。

素の空気。

「お邪魔します」

低い声。

いつもより、少しだけ柔らかい。

希は微笑む。

「どうぞ」

その二言が、
まるで合鍵のように響く。