Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する

思わず息が抜ける。

笑ってしまう。

続けて打つ。

【実は、お料理の仕事が入ってて色々試作するから、食べてもらいたいなって】

すぐに返ってくる。

【料理の仕事もしてるの?すごいね。楽しみにしてる】

画面越しでも伝わる、素直な声。

誇らしさじゃない。

喜んでくれている感じ。

胸が、じんわり温かくなる。

【お腹空かせてきてくださいね】

送信。

しばらくスマホを見つめる。

“迎える側”になる。

それは、少し勇気がいる。

キッチンに立つ。

冷蔵庫を開ける。

オリーブオイル。
ハーブ。
下味をつけた鶏肉。

今日の試作は、ただの仕事じゃない。

誰かを思って作る料理。

その感覚が、こんなにも違うなんて。

まな板の上で、野菜を刻む音が軽い。


旬もまた、スマホを置き、
小さく息を吐く。

彼女の家。

踏み込みすぎないか。

でも、断る理由はどこにもない。

“迎えられる”ということ。

それは、信頼だ。

嬉しくないはずがない。

まだ恋人ではない。

けれど。

次に会う場所は、映画館でもカフェでもない。

彼女のキッチン。

包丁の音。

湯気。

エプロン姿。

その光景を想像してしまう自分に、
少しだけ驚く。

一週間前は、
隣で映画を観ていただけなのに。

今度は、
彼女の部屋の灯りの中へ。

静かに。

確実に。

距離が、変わり始めている。