Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する

「しゅん、さん?」

慎重に発音する。

まだ一歩引いている。

「旬でいい」

低い声。

まっすぐ。

希は思わず笑う。

「それはちょっと……」

胸がドキドキして、破裂しそう。

名前は特別だ。

呼んだ瞬間、関係が変わる。

旬は視線をやわらげる。

「じゃあ、練習ですね」

軽く言う。

でも、逃げない。

そして、ほんの少しだけ真面目な顔になる。

「希さん。また会って貰えますか?」

その言い方に、余計な余裕はない。

まだ恋人ではない。

でも、もう他人でもない。

希はその目を見る。

まっすぐで、静かで、誠実。

「……はい」

小さな返事。

でも確かな意思。

「次は、三割じゃなくて」

希が言う。

旬が笑う。

「ちゃんと観ます」

夜は深い。

でも二人の間には、
はじまりの灯りがともっている。

名前を呼ぶ日まで、あと少し。