圭祐が旬を呼び出した。
カウンター席。
氷の音。
ウイスキーの琥珀色。
圭祐が先に座っている。
「遅い」
旬が隣に座る。
「仕事」
「言い訳か?」
低い。
バーテンダーがグラスを置く。
一口飲んでから、
圭祐が本題に入る。
「おまえさぁ」
静かだけど重い。
「俺、何回言った?」
旬、視線を外さない。
「希泣かせたら許さないって」
旬は何も言い返せない。
「何回目だ?泣かせたの。」
氷がカランと鳴る。
旬、グラスを持つ手を止める。
「……今回のは俺が悪い」
圭祐、目を細める。
「毎回お前が悪い」
「嫉妬した。」
短い。
「処理できなくて距離取った」
圭祐、鼻で笑う。
「いつまでも何やってんだよ」
「自覚はある」
即答。
圭祐がグラスを置く。
音が少し強い。
「お前いい加減にしないと、ほんとにぶっ飛ばすぞ」
声は荒げない。
でも本気。
店の空気が一瞬だけ張る。
旬は動じない。
「殴られても文句言わない」
圭祐、横目で見る。
「希な」
少しだけ声が柔らぐ。
「外じゃ強いけど」
「お前の前では弱い」
「お前の前でだけだ」
旬の喉が鳴る。
「わかってる」
「わかってねぇから泣かせるんだろ」
静かな一撃。
旬は否定しない。
「ごめん」
はっきり。
圭祐、数秒見つめる。
嘘かどうか測る目。
やがて小さく息を吐く。
「結婚したからって安心すんな」
「希は一生、俺の妹だ」
旬が頷く。
「わかってる」
沈黙。
バーのジャズだけが流れる。
圭祐がグラスを軽く上げる。
「まあ、でも。今回は仲直りしたんだろ?」
「した」
「前の希に戻ったとかLINEしてきたもんな」
少しだけ口角が上がる。
旬、苦笑。
圭祐が最後に言う。
「ほんとに幸せにしろよ。たのむぜ」
命令。
短く。
旬もグラスを合わせる。
「する」
静かな約束。
殴らない。
でも逃げ場もない。
兄の圧は、拳より重い。
さっきまでの緊張は少しだけ解けている。
圭祐が氷を揺らしながら、ぼそっと言う。
「……なんだかんだ言ってもさ」
旬、横目で見る。
「お前、親友っていうか」
少し間。
言葉を選ぶみたいに。
「それ以上っていうか…」
視線を逸らす。
「まぁ、ほんとに家族になっちまったけど」
言い終わってから、少し照れた顔。
旬が一瞬止まる。
「圭祐…」
その時。
後ろから声。
「なになに?」
振り向くと――
広哉と凌。
ニヤニヤしながら立っている。
「友情確かめ合ってんの?」
「告白タイム?」
最悪のタイミング。
圭祐の顔が一瞬で無表情になる。
「うるせぇ」
広哉が隣に座る。
「旬、泣いてない?」
凌が反対側に座る。
「抱きしめ合った?」
旬が額を押さえる。
「帰れ」
圭祐も低く。
「呼んでねぇぞ」
広哉が肩をすくめる。
「LINE見たら面白そうだったから」
凌がグラスを頼む。
「家族会議?」
圭祐、ため息。
「違う」
旬がぼそっと。
「ただの説教」
凌が笑う。
「愛あるやつな」
広哉が旬を見る。
「で?仲直りしたんだろ」
「した」
即答。
圭祐が小さく鼻で笑う。
「俺のおかげな」
旬が横目で見る。
「殴られなかっただけありがたい」
凌が吹き出す。
「殴る気だったのかよ」
「殴るって約束だから」
圭祐、無言でウイスキーを飲む。
少し間。
広哉がふっと言う。
「でもさ」
真面目なトーン。
「家族になるって、こういうことだよな」
茶化しが消える。
凌も頷く。
「本気で怒るし、本気で守る」
圭祐がぼそっと。
「当たり前だろ」
旬がグラスを見つめる。
少しだけ目が柔らかい。
「ありがとな」
三人が一斉に言う。
「重い」
「キモい」
「やめろ」
でも、グラスは自然に合わさる。
小さな音。
家族の音。
血は繋がってなくても、
守る覚悟は同じ。
圭祐が最後に言う。
「次泣かせたら全員で行くからな」
旬が笑う。
「怖いわ」
でもその目は、安心している。
本当に家族になった夜。
カウンター席。
氷の音。
ウイスキーの琥珀色。
圭祐が先に座っている。
「遅い」
旬が隣に座る。
「仕事」
「言い訳か?」
低い。
バーテンダーがグラスを置く。
一口飲んでから、
圭祐が本題に入る。
「おまえさぁ」
静かだけど重い。
「俺、何回言った?」
旬、視線を外さない。
「希泣かせたら許さないって」
旬は何も言い返せない。
「何回目だ?泣かせたの。」
氷がカランと鳴る。
旬、グラスを持つ手を止める。
「……今回のは俺が悪い」
圭祐、目を細める。
「毎回お前が悪い」
「嫉妬した。」
短い。
「処理できなくて距離取った」
圭祐、鼻で笑う。
「いつまでも何やってんだよ」
「自覚はある」
即答。
圭祐がグラスを置く。
音が少し強い。
「お前いい加減にしないと、ほんとにぶっ飛ばすぞ」
声は荒げない。
でも本気。
店の空気が一瞬だけ張る。
旬は動じない。
「殴られても文句言わない」
圭祐、横目で見る。
「希な」
少しだけ声が柔らぐ。
「外じゃ強いけど」
「お前の前では弱い」
「お前の前でだけだ」
旬の喉が鳴る。
「わかってる」
「わかってねぇから泣かせるんだろ」
静かな一撃。
旬は否定しない。
「ごめん」
はっきり。
圭祐、数秒見つめる。
嘘かどうか測る目。
やがて小さく息を吐く。
「結婚したからって安心すんな」
「希は一生、俺の妹だ」
旬が頷く。
「わかってる」
沈黙。
バーのジャズだけが流れる。
圭祐がグラスを軽く上げる。
「まあ、でも。今回は仲直りしたんだろ?」
「した」
「前の希に戻ったとかLINEしてきたもんな」
少しだけ口角が上がる。
旬、苦笑。
圭祐が最後に言う。
「ほんとに幸せにしろよ。たのむぜ」
命令。
短く。
旬もグラスを合わせる。
「する」
静かな約束。
殴らない。
でも逃げ場もない。
兄の圧は、拳より重い。
さっきまでの緊張は少しだけ解けている。
圭祐が氷を揺らしながら、ぼそっと言う。
「……なんだかんだ言ってもさ」
旬、横目で見る。
「お前、親友っていうか」
少し間。
言葉を選ぶみたいに。
「それ以上っていうか…」
視線を逸らす。
「まぁ、ほんとに家族になっちまったけど」
言い終わってから、少し照れた顔。
旬が一瞬止まる。
「圭祐…」
その時。
後ろから声。
「なになに?」
振り向くと――
広哉と凌。
ニヤニヤしながら立っている。
「友情確かめ合ってんの?」
「告白タイム?」
最悪のタイミング。
圭祐の顔が一瞬で無表情になる。
「うるせぇ」
広哉が隣に座る。
「旬、泣いてない?」
凌が反対側に座る。
「抱きしめ合った?」
旬が額を押さえる。
「帰れ」
圭祐も低く。
「呼んでねぇぞ」
広哉が肩をすくめる。
「LINE見たら面白そうだったから」
凌がグラスを頼む。
「家族会議?」
圭祐、ため息。
「違う」
旬がぼそっと。
「ただの説教」
凌が笑う。
「愛あるやつな」
広哉が旬を見る。
「で?仲直りしたんだろ」
「した」
即答。
圭祐が小さく鼻で笑う。
「俺のおかげな」
旬が横目で見る。
「殴られなかっただけありがたい」
凌が吹き出す。
「殴る気だったのかよ」
「殴るって約束だから」
圭祐、無言でウイスキーを飲む。
少し間。
広哉がふっと言う。
「でもさ」
真面目なトーン。
「家族になるって、こういうことだよな」
茶化しが消える。
凌も頷く。
「本気で怒るし、本気で守る」
圭祐がぼそっと。
「当たり前だろ」
旬がグラスを見つめる。
少しだけ目が柔らかい。
「ありがとな」
三人が一斉に言う。
「重い」
「キモい」
「やめろ」
でも、グラスは自然に合わさる。
小さな音。
家族の音。
血は繋がってなくても、
守る覚悟は同じ。
圭祐が最後に言う。
「次泣かせたら全員で行くからな」
旬が笑う。
「怖いわ」
でもその目は、安心している。
本当に家族になった夜。

