Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する

希はオフィスで新作を確認していた。

「希さん、三浦さんという方からお電話ですがどうしますか?」

三浦?歩?

「繋いでください」

「もしもし」

静かな男の声。

「久しぶり」

一瞬で分かる。

歩。

「青山のコンペ勝ったよ」

希は窓の外を見る。

「出してたの?」

「おめでとう!すごいね」

「ありがとう。やっぱり建築やりたくて、挑戦はつづけてたんだ」

歩は続ける。

「それで、空間監修希に頼みたい」

希、言葉を失う。

「希に“余白”を入れてほしい」

胸が少しだけざわつく。

懐かしさではない。

緊張でもない。

仕事としての鼓動。

「旬、知ってるの?」

「まだ」

歩、少し笑う。

「どうしよう」

沈黙。

そして。

「やる?」

希はゆっくり息を吸う。

「少し考えさせて」

電話を切る。

希はしばらく動かない。

そこへ、旬からメッセージ。

《歩から連絡きた?》

希、驚く。

《なんで分かったの?》

《歩なら、希に声かけるとおもって》

一拍。

《やるなら、全力で》

《俺は総責任者だから》

《情は挟まない》

希、少し笑う。

《私も》