「ところでさ」と旬
「ん?」
「圭祐はさ、あの“桑田佳祐”から?」
「そう。親父がファン。安易だよな。」
と言いながら、実は気に入っている。
旬はさらに続ける。
「妹の梨乃は“かたせ梨乃”?」
「正解。親父の好みの女優」
圭祐は楽しそうだ。
旬は希を見る。
「じゃあ希は?」
希は首をかしげる。
「知らない」
その瞬間。
圭祐の声色が、ほんの少しだけ変わった。
「希が生まれる頃」
「うん」
「親父の会社、うまくいってなかったらしくて」
希の目が見開かれる。
初耳だ、という顔。
圭祐は淡々と続ける。
「その頃生まれた希に、“希望”を込めて“希”」
部屋が静かになる。
「そのあと作った会社が“HOPE”」
旬の手が止まった。
「……HOPE?」
「そう」
旬の目の色が、わずかに変わる。
「って、あのHOPE?」
旬はゆっくり言った。
「日本のネットビジネスの先駆けの?」
圭祐はあっさり頷く。
「それ」
「……マジか。会社売って遊んでるって、HOPEの事だったの?やばいな…それは一生遊んで暮らせるわ…」
旬は思わず笑った。
「しかもHOPEの事、大学のケーススタディでやった」
「へぇ」
「創業者、かなり変人って書かれてた」
「間違ってない」
圭祐は肩をすくめる。
圭祐が、ふと希を見る。
ほんの少し、兄の顔になる。
「だからさ、お前の名前うちの家で一番重いんだよ」
言葉が、ゆっくりと落ちる。
希は何も言えない。
旬はその横顔を見つめる。
“希望”。
不安の中に生まれた子。
家族の願いを背負って、
そこから会社が立ち上がり、成功した。
偶然じゃない。
流れでもない。
ひとつの祈りが、現実を引き寄せたみたいだ。
旬がぽつりと呟く。
「……ただものじゃないな、トオルさん。」
「うん」
圭祐は短く頷く。
旬はもう一度、希を見る。
「だからか」
「なにが?」
「希がいると、空気変わる」
希はぽかんとする。
圭祐がニヤッと笑う。
「生まれながらの宿命だな」
「やめてよ、重い」
三人、また笑う。
何気ない会話の中でとんでもない家系が判明した。でも旬の中では、静かに整理されていく。
育ちも、環境も。
ただの“お嬢様”じゃない。
守られてきただけの人でもない。
希望を背負って生まれた子。
それでも気取らず、自分の足で立っている。
旬は思う。
(守るって言ったけど守られる側かもしれないな、俺)
隣で笑っている希は、
何も知らない顔をしている。
けれど確かに、この家の真ん中にある光だった。
名前そのもののように。
静かで、強い光。
“希望”という名の。
「ん?」
「圭祐はさ、あの“桑田佳祐”から?」
「そう。親父がファン。安易だよな。」
と言いながら、実は気に入っている。
旬はさらに続ける。
「妹の梨乃は“かたせ梨乃”?」
「正解。親父の好みの女優」
圭祐は楽しそうだ。
旬は希を見る。
「じゃあ希は?」
希は首をかしげる。
「知らない」
その瞬間。
圭祐の声色が、ほんの少しだけ変わった。
「希が生まれる頃」
「うん」
「親父の会社、うまくいってなかったらしくて」
希の目が見開かれる。
初耳だ、という顔。
圭祐は淡々と続ける。
「その頃生まれた希に、“希望”を込めて“希”」
部屋が静かになる。
「そのあと作った会社が“HOPE”」
旬の手が止まった。
「……HOPE?」
「そう」
旬の目の色が、わずかに変わる。
「って、あのHOPE?」
旬はゆっくり言った。
「日本のネットビジネスの先駆けの?」
圭祐はあっさり頷く。
「それ」
「……マジか。会社売って遊んでるって、HOPEの事だったの?やばいな…それは一生遊んで暮らせるわ…」
旬は思わず笑った。
「しかもHOPEの事、大学のケーススタディでやった」
「へぇ」
「創業者、かなり変人って書かれてた」
「間違ってない」
圭祐は肩をすくめる。
圭祐が、ふと希を見る。
ほんの少し、兄の顔になる。
「だからさ、お前の名前うちの家で一番重いんだよ」
言葉が、ゆっくりと落ちる。
希は何も言えない。
旬はその横顔を見つめる。
“希望”。
不安の中に生まれた子。
家族の願いを背負って、
そこから会社が立ち上がり、成功した。
偶然じゃない。
流れでもない。
ひとつの祈りが、現実を引き寄せたみたいだ。
旬がぽつりと呟く。
「……ただものじゃないな、トオルさん。」
「うん」
圭祐は短く頷く。
旬はもう一度、希を見る。
「だからか」
「なにが?」
「希がいると、空気変わる」
希はぽかんとする。
圭祐がニヤッと笑う。
「生まれながらの宿命だな」
「やめてよ、重い」
三人、また笑う。
何気ない会話の中でとんでもない家系が判明した。でも旬の中では、静かに整理されていく。
育ちも、環境も。
ただの“お嬢様”じゃない。
守られてきただけの人でもない。
希望を背負って生まれた子。
それでも気取らず、自分の足で立っている。
旬は思う。
(守るって言ったけど守られる側かもしれないな、俺)
隣で笑っている希は、
何も知らない顔をしている。
けれど確かに、この家の真ん中にある光だった。
名前そのもののように。
静かで、強い光。
“希望”という名の。
