Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する

「まあ、あんなに可愛かったらしょうがねえよな」

旬、止まる。

圭祐は肩をすくめる。

「小さい頃からな、目が大きくて、すぐ泣いて」

「……」

「俺が学校で喧嘩した理由、だいたい希」

旬の口元が少し緩む。

「過保護」

「当たり前だろ、可愛いんだから」

即答。

圭祐の目が、少し真面目になる。

「俺は遊び人でいいけど」

間。

「希にはちゃんとした男が隣にいないと困る」

沈黙。

旬は静かに言う。

「分かってる」

圭祐がじっと見る。

もう値踏みではない。

確認。

旬は目を逸らさない。

圭祐の声が低くなる。

「泣かせたら?」

旬も、低く。

「嬉し泣きしかさせない」

数秒。

圭祐がふっと笑う。

「だろうな」

軽くグラスをぶつける。

小さな音。

「よろしくな、旬」

その一言には、もう棘はない。

兄としてではなく。

ひとりの男としての承認。

そこへ希が戻ってくる。

二人の空気に、すぐ気づく。

「なんか距離近くない?」

圭祐が即答。

「仲良くなった」

旬も軽く頷く。

「な」

希が目を細める。

「え、この前まで火花散ってたよね?」

圭祐が笑う。

「男はな、理屈が合えば仲良くなる」

旬も小さくうなずく。

希は呆れたようにため息をつく。

でも、口元は少し嬉しそうだ。

兄と恋人。

張り詰めていた糸が、静かにほどける。

その夜、
“圭祐さん”は“圭祐”になった。

そして旬は、

希の隣に立つ男として、

家族の中に、そっと足を踏み入れた。