Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する

三人で、軽く飲む。

空気は以前より柔らかい。

圭祐がグラスを置く。

「この前の件」

旬はわずかに身構える。

「ありがとうございました」

旬が止まる。

予想していなかった。

「希、数字に強くないから」

「はい」

「でも、あなたは感情だけじゃなかった」

まっすぐ見る。

「守るじゃなく、育てる視点だった」

静かに、はっきりと。

「正式に安心しました」

希が目を丸くする。

旬は少しだけ照れながら答える。

「まだ勉強中です」

圭祐が笑う。

「俺も」

その瞬間、上下関係が消えた。

兄と恋人ではなく、
経営に向き合う二人の男として。

帰り際。

店の外。

圭祐が旬にだけ小声で言う。

「妹、無理すると黙ります」

旬は真剣にうなずく。

「知ってます」

「泣くと止まりません」

「知ってます」

圭祐は少しだけ目を細める。

そして、短く。

「じゃあ任せます」

それは、正式な承認だった。


その後。

圭祐から旬に、普通に連絡が来るようになる。

「今度ゴルフどうです?」

「希がまた徹夜してる。止めて」

なんだかんだ言いながら、二人は並んで歩き始める。

妹を真ん中に挟む関係ではなく、

同じ未来を支える、
それぞれの立場で。

圭祐は心の中で思う。

——守るだけじゃ足りない。

育てる視点を持つ男。

それが、旬だった。

そして旬も思う。

——兄がいるから、今の希がいる。

対抗ではなく、共存。

並ぶ未来は、二人だけで作るものじゃない。

支える人たちも含めて、
広がっていく。

静かに、確実に。

承認の夜を越えて。