Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する

帰り道。

夜風が、少し冷たい。

希が小声で言う。

「怖くなかった?」

「怖かった」

即答。

「なんであんなこと言ったの」

旬は少し笑う。

「お前の兄貴、頭いいな」

「でしょ」

誇らしそうな顔。

旬は一拍置く。

「でも」

希が見上げる。

「俺も逃げない」

その言葉に、希の目が潤む。

選ばれたい。

並びたい。

その覚悟は、ちゃんと伝わった。



その夜。

圭祐は実家で、父にグラスを傾けながら言う。

「悪くないよ、あの人」

「そうか」

「ちゃんと自分の立場、分かってる」

そして、小さく笑う。

「希の見る目は、まあまあだな」

声は軽い。

だがその奥にあるのは、溺愛と、安堵。

妹の隣に立つ男を、
初めて“認めかけた”夜だった。

静かに。

確実に。

三人の関係は、次の段階へ進んでいた。