Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する

圭祐は酒をひと口飲む。

「正直に聞いていいですか」

「どうぞ」

「希と並べます?」

直球。

希の呼吸が止まる。

空気が凍る。

旬は逃げない。

「並びたいと思ってます」

「“思う”ですか」

圭祐の口角が、わずかに上がる。

試す視線。

旬は、もう一歩踏み込む。

「あなたは、希を“守る対象”にしてますよね」

圭祐の目が、初めて変わる。

「兄なので」

即答。

旬は静かに言う。

「俺は違います」

沈黙。

「守るんじゃなく、選ばれたい」

空気が止まる。

希の指先が、わずかに震える。

圭祐は数秒、旬を見つめる。

測っている。

覚悟を。

そして——

ふっと笑う。

「なるほど」

箸を置く。

「希、頑固なんで大変ですよ」

声が、ほんの少しだけ柔らぐ。

「でも、逃げないならいい」

合格ではない。

だが、“保留”から一段上がった。