どうか、成仏してください!

 「氏原さん〜…」

 「冗談だよ。笹原くんが楽しそうに話してるの、なんか良いなって思う。私はそういうの好きだよ」

 「う、氏原さん〜…!」

 「えっちょ、泣かないで!?ど、どうしたの?」

 突然泣き出した笹原にあたふたする。

 「ご、ごめん。こんな事言ってくれたの初めてで…」

 「意外…」

 笹原は、爽やかな好青年といった雰囲気のイケメンなのだ。黙っていれば。
 ニワトリ趣味にも付き合ってくれる人なんて山ほどいそうではある。

 「なんか始めは、凄く仲良くしてくれるんだけど…こう、徐々にフェードアウトされて、最終的に1人になるというか…」

 「あー…」

 (それは、最初から1人でいるよりもつらいやつなのでは…)

 なんと言うか、哀れである。

 「格好良くても、苦労はするんだなぁ」

 「えっ…?」

 ボンッという音が聞こえてきそうな程、勢いよく赤くなる笹原。

 「う、氏原さん!?何言って…」

 「?事実だけど…」

 「もうやめて…!」

 耐えられなくなったのか、両手で顔を隠してしまった。

 (何だこのかわいい生き物は)

 同情心と母性が爆発した華は、思わず提案してしまう。

 「じゃあ、ニワトリ仲間じゃなくて友達になろうよ」

 「え!?俺なんかに友達ができるなんて…ゆ、夢じゃないよね?」

 「笹原くんだから、友達になりたいんだよ。夢にされたら困る」

 だから俺なんかって言うの禁止、と軽く怒る。

 「…!うんっ!」

 心の底から嬉しそうに笑う笹原に、頬が緩む華。

 「あ、もうそろそろ戻らなきゃ。春野くんが待ってるよ」

 「そうだね」

 そう言って、華のすぐ隣に来た笹原に困惑する。

 「…近くない?」

 「…普通じゃない?」

 「普通じゃない」

 えー、と不満そうだが丁度いい距離に戻ったあたり、笹原は華の距離感を心得ている。

 「あ、そうだ、俺のことは結衣(ゆい)って呼んでよ」

 「えっ、急に何?笹原くん」

 「…。」

 「…結衣、くん…?」

 「どうしたの?華」

 「…いや、何でもない」

 (マジでなんなんだ…?)

 唐突に変わった笹原の様子に、面倒臭いな、と思う華は、多分ヒロインに向いてない。