どうか、成仏してください!

 「…な…華」

 (?…誰?)

 「華、大丈夫。貴女なら出来る」

 そう言って、ぼんやりと姿を消していく女性。出会ったことはなかったが、華には心当たりがあった。

 (待って!もしかして…)

 声が出ないことにも気付かず、華は必死に呼び止めた。
 その為か、女性は一度振り返ると穏やかな笑顔を浮かべる。

 「じゃあね」

 そして、今度こそ姿を消した。

 「お母さんっ!」

 勢いよく起き上がる華。

 「…夢…?」

 (何だったんだろう…まあ、でも)

 「頑張るね、お母さん」

 決意を固めて、身を引き締めるのであった。

   〜〜〜〜〜〜〜〜

 「今日は、急なお話だったのに本当にありがとうございます」

 「気にしないでよ、身内みたいなものだしね」

 春野との約束の時間の数時間前にお寺に到着した華は、住職に改めて感謝していた。
 それもそのはず。今日来ているこのお寺は著名人もよく参拝しに来る程、御利益があると有名な凄い場所なのだ。
 いくら住職と知り合いでも、尻込みしてしまうのは無理はない。

 「いや〜、何年ぶりだろう…前に来たときは、こんなに小さかったのになぁ」

 「いつの話してるんですか、(まこと)さん…でも、あの頃は本当に助かりました」

 「すごかったもんね、雅之(まさゆき)が華ちゃんを連れてきたときは、こんなに幽霊を惹きつける子っているんだって思ったよ」

 「あはは…」

 誠は住職の名前、雅之は、華の父の名前である。実は、誠は華の父と同級生だったらしく、今でも仲が良い。

 「それで、今日はお祓いだっけ。華ちゃんと共同でするなんて、感慨深いねぇ」

 「そうは言っても、私はお祓い自体には参加しませんよ?」

 「だとしても、嬉しいんだよ。華ちゃんは娘みたいなものだから」

 「…そうですか」

 「あ、もういっその事、僕の息子と結婚しちゃおうよ!」

 「いや、李緒(りお)くんにも悪いですよ。彼女さんいるだろうし」

 「李緒…可哀想に…」

 「?」

 結婚に関しては困るが、誠の言葉は、普通に嬉しい華であった。