羅 と 柳

(羅が17歳の頃...)

連日35℃を記録する猛暑。

小柄で体温の高い羅は、刺さるような日差しと、アスファルトの照り返しに、じわじわと体力を削られていた。

羅「...あ゙づぃ゙......」

顔を真っ赤にしながら、本校舎と食堂のある建物を繋ぐ渡り廊下の端の方で、暑さに耐えきれずへたりこんだ。

ふわふわの体毛も汗でぺたぺたに湿り、体の熱をうまく逃がすことが出来ない。

立ち上がる気力はほとんど無い。

放課後の今、食堂勤務のおばちゃん達も、部活動に所属する生徒も、夏季テストのせいで、みな退勤 下校済みときた。

羅の脳裏に、うっすらと死がよぎる。

もうダメだ、と言うかのように目をゆっくりと閉じた。





羅「ぐるぐるする...揺れてる......。」

目を開けると、そこは海の真ん中。

近くにも遠くにも島1つとなく、ただひたすら全身が波に揺さぶられていた。

このままでは、羽毛が海水を吸い込んで重さで沈んでしまう。

どうにかしなければと、顔だけでも浮かせようともがく。

焦りにより、判断が鈍っていく。

飛び上がれば助かるのではないかと思い立ち、両腕を必死に仰ぐが、水の中にいては飛び立てないくらい、冷静であったならば気づいただろう。

水を吸って重くなった両腕が海の底に引きずりこまれ...





羅(!)

ハッと目が覚めると、そこは海の真ん中ではなく、冷房の効いた保健室のベッドの上だった。

羅(海は...、夢だったんだ...。)

制服のボタンやベルトが緩められ、首や血管の集まっている関節が氷嚢で冷やされている。

耳の中に水が入っているみたいに、周りの音が曇っている。

?「...あ、起きた。...先生呼んでくる。」

すぐ横から聞こえた、聞き馴染みのない少し低い声。

すこしずつ周りの音がハッキリと聞こえてくる。

養護教諭を連れ一緒に戻ってきた彼は、先程より離れた椅子に座ってこちらを見ていた。

養「羅くん、渡り廊下で倒れたの覚えてる?柳くんが見つけて、運んできてくれたの。もう少し休んで、気分が良くなったら、柳くんにちゃんとお礼してね。」

柳「いや、たまたま見つけただけだから...。」

と言いながら、近づいてきた彼は「ん。」と、ペットボトルに入った飲料を差し出してきた。

柳「これ、コパロディア用の経口補水液。俺、シルトディアだから飲めん。」

(種族が違うものだから、受け取りを断られると困る)という意味だろうと、有難く受け取った。

羅「ありがとう。迷惑かけてごめんね。」

養護教諭が退室すると、柳はまた羅の近くの椅子に戻ってきて、スッと額に手をあてがった。

柳「さっき抱えた時よりは熱くないな。良かった。」

シルトディアの彼の手は、ひんやりと冷たかったが、白月の顔は真っ赤に熱かった。