一番濃く理玖の匂いが残るシーツに、素肌が触れる。そのことが、恥ずかしいのに心地良くて、落ち着かない。
身体を腕で隠し、どこを見ていたらいいのか分からなくなって、目を白黒させる。理玖が乱雑に自分の着ている洋服を脱いだ。
初めて理玖の素肌を目にして、胸がきゅっと締めつけられた。細いのに引き締まった身体をしていて、服越しでは分からなかった体の線に、思わず目を見張る。その手で触れられているのだと思ったら――
琴葉は自分の顔を両手で覆った。手のひらに、自分の顔の熱が伝わっていく。理玖がどんな顔をして自分のことを見ているのか、見られない。
「・・・・・・どうしたの?」
「・・・・・・理玖くんが、すごく――」
綺麗で、色っぽくて――言葉は、上手く出てこない。微かに理玖の笑う声が聞こえて、琴葉の手に、唇が落とされた。
優しく指を絡めるようにして、琴葉の手を外した。顔が燃えるように熱い。頬を赤く染める理玖と目が合った。
「・・・・・・すごく、綺麗だね」
その言葉を聞いて、何故か泣きたくなった。とても、幸せで――幸せすぎて、胸がいっぱいだ。
理玖の唇が、琴葉の目元、鼻、頬、口へ辿るように触れる。首筋に触れられた瞬間、小さく肩が震えた。
そして、ぎゅっと抱きしめられた。肌が触れ合い、体温が混ざる。
何の隔たりもなく抱き合うのは、恥ずかしいけれど心地がよくて、気持ちいい。琴葉は、理玖の存在を確かめるように背中に手を回した。
目を閉じて、触れる肌の心地よさを感じていると、理玖の手が動いて胸に触れた。同時に、耳に息を吹きかけられて、琴葉の口から甘い声が洩れた。
理玖の手が、琴葉の形を確かめるように、慎重に、ゆっくり動く。理玖が動くたびに、琴葉の口から声にならない声が洩れた。
「・・・・・・あっ・・・・・・ん・・・・・・理玖くん」
消え入りそうな声で名前を呼んだら、首から顔を上げて、口を塞がれた。そして、優しく微笑まれる。胸が苦しくなるくらいドキドキして、手を伸ばしたら、指を絡めてくれた。
「・・・・・・はあ、可愛い」
癖になりそう、と呟く声が聞こえる。
それからしばらくの間、理玖は動かなかった。恐る恐る理玖の顔を見上げたら、目が合う。理玖は琴葉の額に唇を落とすと、頭を優しく撫でてくれた。
理玖が琴葉の耳に顔を寄せて、息を吐く。身体がビクッと震えて身をよじったら、耳たぶを食まれた。だんだん耳腔の方へ唇が移動し、琴葉は少し息を呑む。
「ああんっ・・・・・・!?」
頭の中に、理玖の呼吸音と水音が響き渡る。自分の口から、大きな嬌声が出ていることには気づいているのに、抑えられない。シーツを掴む指に、力が入った。
その間に絡めていない方の手が、胸から下りていった。ショーツ越しにひどく感じるところをなぞる。全身がゾクゾクして、電流が走ったように跳ねた。
恥ずかしくて仕方がないのに。それなのに、今までで一番甘い声が出ている。
この感覚から、逃げたいのに――逃がさないでほしい、だなんて、思ってしまう。
「・・・・・・琴葉」
耳元で名前を呼ばれる。その時、理玖の触れているところから、途轍もない快感が押し寄せてきて、頭が真っ白になった。
身体が、小刻みに震える。何が起きたのか分からなくて、半ば放心していると理玖が覗き込んできた。琴葉に軽く口づけをし、微笑む。
「・・・・・・大丈夫だった?」
そう聞かれて、答えに詰まった。熱くて仕方のない顔を隠したいけれど、理玖が指を絡めてくれているから、それもできない。
顔を逸らして目を瞑っていたら、理玖の笑い声が聞こえてきた。
「ふふ、可愛いね」
理玖は絡めていた手を解くと、琴葉の隣へ横になる。琴葉の身体を抱き寄せ、言った。
「ねえ、琴葉。こっち見て」
「・・・・・・っむ、無理です・・・・・・」
自由になった手で、琴葉は顔を覆った。消え入るような声が出てしまって、理玖がクスッと笑う気配がする。
「こっち見て。お願い」
理玖は琴葉の髪を優しく手で梳きながら甘く、懇願するように囁いた。そんな風に言われてしまったら、抗うことなんてできない。
琴葉は、ゆっくり、手を下ろした。視界が開けた瞬間、目の前にあった理玖の目があまりにも熱く、愛おしげに細められているのが見えて、また心臓が大きく跳ねる。
「・・・・・・ん、可愛い」
理玖の両手に頬を包まれた。おでこをコツン、と合わせて、理玖は穏やかに笑う。
「・・・・・・今日はここまでにしようか」
