小児の治療

はぁ…苦笑


菜穂ちゃん逃げ出したか


そうため息をつきながら


昔のあの子を思い出す。



診察室


やっと一人前の小児科医になったが
新人のように堅苦しさがまだ抜けなかった。


子供達からは怖いと言われて泣かれる始末で


俺は小児科医に向いてないのかと思いはじめていた頃


1人の女の子がやって来た。


side瀬尾


ふぅ。


ピッ


マイクのボタンを押し患者の名前を呼んだ。


瀬尾)夢野菜穂さん診察室3番へどうぞー


ピッ





外から一つの足音が聞こえる


ガラガラ


瀬尾)どうぞ…


んやぁっ!


? 蹴らないよドア壊れちゃうよ!


瀬尾)こんにち…


? いい子にしようって愛ちゃんと約束したでしょ!


やぁぁぁ泣泣泣


登場したのは女性に抱えられて今にも落ちそうな
1人の女の子だった。


瀬尾)こんにちは~


そう言うと一瞬泣き止む菜穂ちゃん


菜穂)…泣


? ごめんなさい!児童養護施設から来ました。
  職員の清水です!


瀬尾)名簿に戻っていました。清水さんですね。
   親御さんの代わりの方ですか?


清水)はい!養護施設なので代わりですが、
   今日はよろしくお願い致します。
   

菜穂)…あいちゃん泣


清水)なーに


菜穂)かえる泣


清水)来たばっかりだよ笑


菜穂)なおちゃんげんき、泣


清水)まずは椅子座ろう


清水さん若いのに肝座ってるなぁ…


よし、やるか


瀬尾)そこに一緒に座ってもらえますか?


清水)わかりました。


菜穂)やだぁっ


そう言いながら着席した清水さんと菜穂ちゃん


瀬尾)菜穂ちゃんこんにちは~


菜穂)このひといやっ!


瀬尾)まだ何もしてないじゃん


あっ、しまった…つい


菜穂)なにするの!泣


あれ、怖がられてないのか…


瀬尾)これをお腹にあててもしもしする


うさぎさんの聴診器を菜穂ちゃんに見せる


瀬尾)これなら怖くないだろ?


菜穂)やだーっ泣


うさぎさんの聴診器では興味を示さなかった(._.)


瀬尾)やだじゃない


瀬尾)清水さんちょっと服あげてください


清水)わかりました


菜穂)あいちゃんやらないでっ泣


瀬尾)やります。


清水)なおちゃん頑張ろう


菜穂)やぁだっ!泣


モジモジ動く菜穂ちゃんを気にせず進める先生


菜穂)やぁ泣!!


瀬尾)うるさい聞こえないでしょ


我儘な菜穂ちゃんを言葉で詰める


菜穂)んぅ…泣!


静かになった菜穂ちゃんはせめてもの抵抗なのか
瀬尾先生をひと蹴りした。


瀬尾)はい。最後口あーんして


これまた先生には効かないようで


菜穂)やだっ!


清水)菜穂ちゃん先生の言うこと大事だよ


瀬尾)清水さんも言ってるから、あーんして


菜穂)やっ!


すっかり泣き止んだ菜穂ちゃんは最後の抵抗で
プイッと壁を向く


瀬尾)こらこっち向きなさい


柔らかい頬を片手で掴み目線を合わせる


菜穂)あぁ泣!


瀬尾)お口開けて下さい


口を開けるまで手を離さない先生


菜穂)やぁだぁ!泣


瀬尾)じゃあごめんねちょっと失礼


菜穂が話した瞬間ムニュっと口を開け
閉じないように舌圧子を入れる


菜穂)ゴホッ!


瀬尾)ライト使うよ


抵抗の隙を与えずテキパキ進める


瀬尾)よし喉は問題ないな


清水)どうでしたか?


瀬尾)心音も安定してます。大丈夫です


清水)よかったです。


瀬尾)ただ、体に数カ所あざがあるみたいなので
   血液検査しましょうか。


清水)…


瀬尾)ちょっと気になるかなーこのあざ


清水)そうですか、


清水さんは少し落ち込んだ顔を見せた。


菜穂)あいちゃん!かえるぅ!泣


瀬尾先生と清水さんが話してる間でも
菜穂ちゃんは大きな声で割り込んでくる


それを遮るように先生が一言


瀬尾)清水さんは待合室で待ってて下さいね。


清水)えっ、どうしてですか?


瀬尾)親御さんではなくとも随分
   気に入られてるみたいなので


そう言った瀬尾先生の目線の先は


菜穂)あいちゃん泣


清水)えっ笑


清水さんの後ろにひょこっと顔を出しながら
隠れている菜穂ちゃん


小さい手で清水さんの足を掴む姿は
まるで何かを察したようだった。


瀬尾)はやいな笑


瀬尾先生も珍しく笑ってしまう程


この行動はものの数秒だった。


瀬尾)清水さん少し待って下さいね、


そう言ってピッチを取り出す


ピッ


瀬尾)空いてる看護師3番来て


? わかりました


ピッ


瀬尾)清水さんお待ち頂いてすいません
   呼んだのでちょっと待って下さいね、


清水)大学病院なのに、看護師いないんですか?


瀬尾)あはは


瀬尾)この病院毎日人手不足なんです。


瀬尾)だから診察にもあまり横に看護師が
   居る事が少ないんですよね


清水)えっ、すいませんでした


瀬尾)全然大丈夫ですよー
   

清水)…フッ


(なんかこの先生おじいちゃんみたい笑)


瀬尾)緊張少しはほぐれたようですね


清水)あっ、はい!


瀬尾)よかったです 


菜穂)ムゥ…なおちゃんよくないっ!!


瀬尾)そうだよなー


そう言いながら菜穂ちゃんと目線を合わせて
ニコッとした。


ガラガラ


失礼します!助っ人来ました!


瀬尾)おっ来たようですね


清水)?


瀬尾)菜穂ちゃんの助っ人です。


初めまして


二見)小児看護師の二見蒼です。


清水)初めまして養護施設の清水です。
   菜穂ちゃんをよろしくお願い致します。


瀬尾)ニコッ


二見)こちらこそよろしくお願いします。
   菜穂ちゃんはお任せ下さい。
   採血終わり次第待合室まで送り届けますね。


清水)ありがとうございます。





菜穂)あいちゃんなおちゃんやらないよーっ


(話長くてちょっと余裕出て来た菜穂ちゃん)


瀬尾)よしっ


瀬尾)自己紹介済んだようだし
   清水さん菜穂ちゃん一旦もらいますね


清水)はいっ


二見)お預かりします!


菜穂)あいちゃん!


余裕が無くなり大きい声を出す菜穂ちゃん


二見)あっ!君が菜穂ちゃんだねー!


隠れていた部分から顔が出る


二見)こんにちは看護師のふたみあおいです。


二見)採血するお部屋に僕と一緒に行こう


菜穂)ン…泣


瀬尾)あれれ泣いちゃったな、


二見)えー僕そんなに怖い?かなしいなー


フルフル 首を横に振る


瀬尾)まさか菜穂ちゃん採血の意味
知ってたり?


ウンウン 頷く


(瀬尾・二見)小児用語使ってなかったのに…


菜穂)ちゅうしゃやだー!!!泣


清水さんから離れなった菜穂ちゃん


清水)さっき本に出てきて話しちゃった…


(瀬尾・二見)マジかー


瀬尾)清水さんちょっと時間も無いので
   残酷ですが引き剥がしちゃいますね


清水)えっ笑


二見)菜穂ちゃん行こっか


菜穂)いやっ!


二見)ごめんね終わったら帰ろうね


よいしょ


菜穂)あ泣いやぁぁぁぁ!!!


二見)よしよし大丈夫だよー


背中を優しく撫でる


瀬尾)二見そのまま処置室行ってて


二見)わかりましたー


二見)清水さんにバイバイしとく?


菜穂)バイバイしなぁぁい!泣


二見)あはは では失礼しましたー


泣く菜穂ちゃんを抱えながら
診察室の奥の方に二見先生はきえていった。


瀬尾)清水さんは待合室でお待ち下さいね。


清水)わかりました。


瀬尾 看護師からも説明があると思いますが、


瀬尾)菜穂ちゃんはアザの大きさや数からして
   白血病の疑いがあります。
   まずは採血で確認したい事があるので
   採血をしてから必要であれば
   今日ではないですが検査入院を考えています。


清水)…っ


瀬尾)大丈夫ですよ。菜穂ちゃんは治します。


清水)菜穂ちゃんをよろしくお願い致します…


瀬尾)はい


瀬尾)待合室で待ってて下さいねニコ


そう言い、瀬尾先生も早足で奥の方にきえていった。