詩集“幸人”
「お前と出会ってから」
おまえのように
宇宙の話をする女は
初めてだった
初めてだった
死線まで行ったことのある女に出会うのは
最初は単なる興味だった
おまえが深夜に仕事を終えて
コンビニで食べ物を買い漁って
泣きながら口の中に詰めた日々も
そばにいた
きたならしく髪をぼさぼさとさせて
何度も暴れて、何度も死をはかったおまえが
いまは大人になり
苦しんだことがないかのように
悩みがないかのように
泣いたことがないかのように
狂ったことがないかのように
笑顔を周りに振り撒き
背筋を正して
伸ばした髪をアップにし
洒落た格好で仕事にゆく
どうかこれからのきみの人生が
穏やかでありますよう
「支配という守り」
史織、お前はどこを歩いているんだ?
そっちじゃない、こっちだ
そうだこっちだ、いつも間違えてる
俺のことはどうでもいい
お前が塔に落ちる前に
いつも言ってるだろ?
お前は人の話を聞かない
俺は花の話をしない
空の話や鳥の話や魔法の話や
手紙の話はしない
恋の話も感情の話もしない
女はそういう話が好きだ
ただそれだけだから
気にすることはない。
そんなに心が揺れるなら
もう誰とも話すな
そんなに気持ちが持っていかれるなら
もう誰からも話しかけられるな
俺はお前を守りたい。
誰もお前を嫌ってなんかいない
ことがとても悔しい
もしお前が1人になっても
俺がついてるってのに。
そうだよ、俺は愛の話なんかしねえ
恋の話なんかしねえ
ただ絆のようなもので
お前を守らせてくれ。
「7度目の春」
さあ七度目の春を始めよう
変わらぬ想い、変わらぬ2人で。
なんだっていうんだと思うのか?
薔薇が咲く奇跡を
お前が育てたんだぞ
そのアップルパイは
お前が焼いたんだぞ
その魔法の手のひらで
その曲はお前のためいきから
この詩はお前の囁きから
だれも影響されてないとでも?
ちゃんと見られられてるし
味わってるはずだ。
詩集“夫婦の肖像”
「吹雪の夜に」
吹雪の夜に
あなたは知恵を出して暖をとってくれる人
吹雪の向こう側のどこかで歩く仲間に
想いを馳せても
ふたりの腰に紐を繋いでいるから
どこにもいかない
できないことはできない
できることをやろう
「春」
春が私を殺す
だからなんだというんだろう
薔薇たちが葉を出しはじめた奇跡が
春にまつわる全てのことが
忘れていた過去を思い出させる
狂った日々を思い出させる
麻薬のような音楽が
インスピレーションをこじ開ける
それは私をものすごい速さで浸し殺す
麻薬のように毒が回って
気持ちが良くなって
どんどんほしくなる
幻覚の世界で会ってきた
シガシガと輝く仏のような微笑みが
それがないとそわそわさせる
見捨てないでという不安と
お前など何もしてやれないという
心の声が私の首を絞める
人との雑談が、誰かの小さな気遣いが
笑いが、仕事が、流れる毎日が
向き合わなければならないことが
実験動物のように
毒を投与されて快楽に溺れるように
ものすごい速さで私を殺していく
それは刹那くて、息ができないほどだ
3.ためらい
神はいちばん愛しい人のすがたをしている
神はいちばんすがりたい人の姿をしている
貴女の瞳の奥に感じる何か
どうしていたの、どこにいたの
どれほどの死線をこえてきたの?
俺の耳をくすぐらないで
貴女の官能的な声
そう、俺たちは破壊神の子であると
気づきはじめた
揺れる幕の中でためらいながら
ライオンの夫婦のようにーー
4.夫婦の肖像
アルビノの男性と、ショートヘアの女性
眼鏡の男性と、鼻のない女性
ジャケットの男性と、顔が左右非対称の女性
髪を剃っている男性と、髪を失った女性
義眼の男性と、微笑む女性
顔にあざのある男性と、ショートボブの女性
それらは彼らにとってあたりまえの
世界一美しい、夫婦の肖像。
「お前と出会ってから」
おまえのように
宇宙の話をする女は
初めてだった
初めてだった
死線まで行ったことのある女に出会うのは
最初は単なる興味だった
おまえが深夜に仕事を終えて
コンビニで食べ物を買い漁って
泣きながら口の中に詰めた日々も
そばにいた
きたならしく髪をぼさぼさとさせて
何度も暴れて、何度も死をはかったおまえが
いまは大人になり
苦しんだことがないかのように
悩みがないかのように
泣いたことがないかのように
狂ったことがないかのように
笑顔を周りに振り撒き
背筋を正して
伸ばした髪をアップにし
洒落た格好で仕事にゆく
どうかこれからのきみの人生が
穏やかでありますよう
「支配という守り」
史織、お前はどこを歩いているんだ?
そっちじゃない、こっちだ
そうだこっちだ、いつも間違えてる
俺のことはどうでもいい
お前が塔に落ちる前に
いつも言ってるだろ?
お前は人の話を聞かない
俺は花の話をしない
空の話や鳥の話や魔法の話や
手紙の話はしない
恋の話も感情の話もしない
女はそういう話が好きだ
ただそれだけだから
気にすることはない。
そんなに心が揺れるなら
もう誰とも話すな
そんなに気持ちが持っていかれるなら
もう誰からも話しかけられるな
俺はお前を守りたい。
誰もお前を嫌ってなんかいない
ことがとても悔しい
もしお前が1人になっても
俺がついてるってのに。
そうだよ、俺は愛の話なんかしねえ
恋の話なんかしねえ
ただ絆のようなもので
お前を守らせてくれ。
「7度目の春」
さあ七度目の春を始めよう
変わらぬ想い、変わらぬ2人で。
なんだっていうんだと思うのか?
薔薇が咲く奇跡を
お前が育てたんだぞ
そのアップルパイは
お前が焼いたんだぞ
その魔法の手のひらで
その曲はお前のためいきから
この詩はお前の囁きから
だれも影響されてないとでも?
ちゃんと見られられてるし
味わってるはずだ。
詩集“夫婦の肖像”
「吹雪の夜に」
吹雪の夜に
あなたは知恵を出して暖をとってくれる人
吹雪の向こう側のどこかで歩く仲間に
想いを馳せても
ふたりの腰に紐を繋いでいるから
どこにもいかない
できないことはできない
できることをやろう
「春」
春が私を殺す
だからなんだというんだろう
薔薇たちが葉を出しはじめた奇跡が
春にまつわる全てのことが
忘れていた過去を思い出させる
狂った日々を思い出させる
麻薬のような音楽が
インスピレーションをこじ開ける
それは私をものすごい速さで浸し殺す
麻薬のように毒が回って
気持ちが良くなって
どんどんほしくなる
幻覚の世界で会ってきた
シガシガと輝く仏のような微笑みが
それがないとそわそわさせる
見捨てないでという不安と
お前など何もしてやれないという
心の声が私の首を絞める
人との雑談が、誰かの小さな気遣いが
笑いが、仕事が、流れる毎日が
向き合わなければならないことが
実験動物のように
毒を投与されて快楽に溺れるように
ものすごい速さで私を殺していく
それは刹那くて、息ができないほどだ
3.ためらい
神はいちばん愛しい人のすがたをしている
神はいちばんすがりたい人の姿をしている
貴女の瞳の奥に感じる何か
どうしていたの、どこにいたの
どれほどの死線をこえてきたの?
俺の耳をくすぐらないで
貴女の官能的な声
そう、俺たちは破壊神の子であると
気づきはじめた
揺れる幕の中でためらいながら
ライオンの夫婦のようにーー
4.夫婦の肖像
アルビノの男性と、ショートヘアの女性
眼鏡の男性と、鼻のない女性
ジャケットの男性と、顔が左右非対称の女性
髪を剃っている男性と、髪を失った女性
義眼の男性と、微笑む女性
顔にあざのある男性と、ショートボブの女性
それらは彼らにとってあたりまえの
世界一美しい、夫婦の肖像。

